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2008年12月09日(火) 20時23分

「高裁の判断は妥当」識者は評価 広島の小1女児殺害控訴審産経新聞

 「審理を尽くしていない」として1審判決の問題点を指摘し、審理を差し戻した今回の判決。刑事訴訟の専門家は「十分に証拠を検討していないという点で、高裁の指摘は正しい」「裁判員制度を意識する余り、1審の審理が拙速なものになったのではないか」などと高裁の判断を評価した。

 元判事で早稲田大学大学院法務研究科、川上拓一教授(刑事訴訟法)は「検察側・弁護側双方の意見を聞かずに、被告の供述調書の証拠請求を却下した1審の審理の進め方を問題視した結果で、高裁の判断は正当だ」と評価した。

 川上教授は「被告の供述調書は重大な証拠の1つ。裁判所が双方の主張を聞いた上で内容を検討するのは当然のことだ」と、1審の審理のあり方に疑問を投げかける。その上で、「供述内容をきちんと取り調べることで、犯行場所を特定できるとした高裁の指摘は妥当。真実解明の可能性が十分に残されていると判断したのだろう」と分析した。

 また、元最高検検事の土本武司・白鴎大学法科大学院長は「来年始まる裁判員制度を意識して、1審の審理が過去の同様の事件よりもかなり短い期間で行われた」と指摘。迅速な審理を追及しすぎたため、「1審は事件を単純にし過ぎて拙速なものになった。しかし、犯罪は人間が犯すもので、そんなに簡単に分かるものではない」と話す。

 今回の判決について、土本氏は「裁判員制度を前に、1審における公判前整理手続きをベースにした集中審理のマイナス面が現れてしまったのではないか。その意味でも高裁の指摘は重い」と意義を説明している。

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