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2008年12月09日(火) 20時11分

<グアンタナモ特別軍事法廷>同時テロ遺族が初傍聴毎日新聞

 【グアンタナモ(キューバ)大治朋子】01年の米同時多発テロで、殺人などの罪に問われた国際テロ組織アルカイダの元最高幹部、ハリド・シェイク・モハメド被告ら5人に対する事前審理が8日、キューバのグアンタナモ米海軍基地の特別軍事法廷で開かれた。5人は有罪を認める意向を示し、審理の打ち切りを求めた。今回初めて同時テロの遺族の傍聴が認められ、会見でテロ容疑者収容所閉鎖反対の意思を表明した。ブッシュ政権が、収容所閉鎖を掲げるオバマ次期政権への移行を前に、けん制を強めているとの見方もある。

 ◇被告、審理打ち切り要求

 同事件の事前審理は6月に始まり、今回で4回目。これまで記者と人権団体だけに限られていた傍聴は、初めて遺族にも公開された。傍聴席では、9人の遺族のほか、約50人の記者が見守った。

 午前9時、開廷。ニューヨークから駆けつけたモリーン・サントラさん(63)は、事件で殉職した消防隊員の長男、クリストファーさん(23)の写真を胸の前で掲げ、「息子も(被害者として)裁判に参加させたくて」と思いを語った。

 同時テロを計画立案したとされるモハメド被告は英語で言った。「有罪を認める」。5人は死刑で「殉教者」になることを希望している。オバマ氏は「人権上の問題」から同収容所の閉鎖や通常の司法手続きへの変更を提唱していることから、同氏が次期大統領に当選した先月4日、5人は死刑執行を急ぐため有罪を認める方針を決めたという。

 モハメド被告の言葉に、サントラさんは胸の内で「やった」と叫んだ。長年抱えてきた「怒り」のやり場を見つけた思いだったという。だが被告らは「こんな法廷は(米国が正当性を強調するための)ショーだ」と挑発的な言葉も繰り返した。

 傍聴席と法廷は分厚い3重のガラスで区切られ、肉声は聞こえない。天井から下げられたテレビモニターには20秒遅れの法廷の映像と音声が流された。記者の隣に座った人権団体メンバーは「被告が『不適切』な発言をすると、すぐに音声を消せるシステムになっている」とささやいた。虐待に関する証言などが削除されている可能性があるという。

 ◇「米国の安全のため収容所は必要」…遺族が会見

 閉廷後、遺族らは会見。事件で両親を失った公務員のハミルトン・ピーターソンさん(49)は「米国は適切な裁判を世界に証明するために最善を尽くしている」と強調。「米国の安全のためにも収容所は必要だ」と指摘した。

 ◇グアンタナモのテロ容疑者収容所

 米国はかつて友好国だったキューバとの協定で租借した土地に米海軍基地を建設。ブッシュ大統領は02年、その一角にイラクやアフガニスタンでの「対テロ戦争」で拘束した「敵の戦闘員」の収容所を開設した。今も約250人が通常の裁判手続きを受けないまま収容されている。

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