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2008年12月08日(月) 08時59分

スマートフォンを販売するキャリアとの連携も重視——マイクロソフト、Windows Mobile向け開発者支援を強化+D Mobile

 マイクロソフトは12月4日、Windows Mobile用アプリケーションの開発者を支援する「Windows Mobie開発者事務局」を設立した。技術情報の提供など開発者向けサポートを充実させるほか、既存の開発者コミュニティへの支援も強化。さらに、Windows Mobile端末を販売する通信事業者と開発者を結ぶ場を提供することで、Windows Mobileプラットフォームの活性化を図る。

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 設立発表会に出席したマイクロソフト業務執行役員コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部コンシューマーWindows本部兼モバイルコミュニケーション本部担当の高橋克之氏は、「Windows Mobile開発者の約4割が、技術情報不足を指摘している。今回設立した開発者事務局では、登録者を広く募集して開発者向け情報を迅速に提供したい」とコメントした。

 マイクロソフトはすでに、同社製品向けの開発者サポートサービス「MSDN(Microsoft Developer Network)フォーラム」内にWindows Mobileフォーラムを設けて、ユーザー同士が交流したり、エバンジェリストからのサポートを受けられる環境を無償で用意している。また、有償のアドバイザリーサービスを利用すれば、ソースコードレベルでのパフォーマンス改善など、より深いサービスが受けられる。しかし、こうした取り組みは「あまり浸透していない」(高橋氏)のが現状だ。

 また、Windows Mobile端末を販売するキャリアと、ソフトウェアやサービスの開発者との関係が希薄な点も指摘されるという。ハードウェアやネットワークに依存する問題へ対処するには、実機での検証が必須だが、ソフトウェアベンダーには大きな負担となる。開発者事務局ではキャリアとの協力体制も見直し、検証環境も強化していく。

 「ケータイに比べて、スマートフォンの売れ行きは良い。商戦期を前に景気が悪化し、この冬の端末販売がどうなるかと思ったが、Windows Mobile端末は好調だ。日本におけるWindows Mobileの歴史は、2005年にウィルコムが『W-ZERO3』を発売してからわずか3年。当時は1社1機種という状態だったが、現在はすべてのキャリアでWindows Mobileが採用されるなど、エコシステムが拡大した。これも、キャリア、メーカー、ソフトウェアベンダー、エンドユーザーの密なつながりがあったからといえるだろう」(高橋氏)

 いわいるスマートフォン向けのプラットフォームには、Windows Mobileのほかに、Symbian OSやBlackBerry、Palm OS、Linux、そしてiPhone向けのiPhone OSなどがある。高橋氏は、2012年までにWindows Mobile端末が全世界で19%のシェアを確保するというIDCの調査結果を示し、「SymbianやiPhoneなど、話題のプラットフォームはいくつかあるが、最もバランス良く成長していくのはWindows Mobile。開発者事務局を通じて、草の根レベルでの情報交換やキャリアとの交流を活発化させたい」(高橋氏)と、開発者にメッセージを送った。

●進むスマートフォンへのパラダイムシフト

 続いてキャリアの代表として、NTTドコモ フロンティアサービス部アプリケーション企画担当部長の山下哲也氏が登壇。オープンプラットフォーム市場に対するドコモのスタンスを説明した。

 ドコモは2008年冬モデルで、HTC製の“Touch Pro”「HT-01A」と“Touch Diamond”「HT-02A」を発表した。2009年度以降も、Windows Mobile端末の機種を増やすほか、対応サービスも拡大する。

 山下氏は、「Windows Mobileのポテンシャルが高いのは、ネットワークとデバイス、そしてアプリとのフレームワークが完成しているから。これらを連携させるには時間とエネルギーが必要だが、Windows Mobileはすでにできあがっているのが大きな魅力」と評価した。また、プラットフォームを取り巻く環境についても、大きな期待を寄せていると話す。

 「まず、商用化ノウハウが確立していることが大きい。各キャリアからWindows Mobile端末が発売され、いくつもの製品が流通するなど、安心感がある。さらに、Windowsの豊富なソリューション資産を活用できるのもうれしい。プラットフォームが普及するには、技術的な面だけでなく(開発側が)使いこなすためのいわゆるノウハウが必要。iPhoneやAndroidのような新しいプラットフォームのケータイを作るには、時間とエネルギーが必要だが、数年間の積み重ねで、先行しているWindows Mobileは安心感がある」(山下氏)

 現在普及しているインターネット、そしてPCと携帯電話は、ともに1990年代半ばから普及がしはじめた。現在、PCを利用する目的のほとんどがインターネットやWebアプリに移り、OSやプラットフォームの違いを意識することはあまりない。山下氏は携帯電話についても多機能化、複合化が進み、PCと同じように環境の違いを意識することなく、同じサービスを使えるようになると話す。

 「“もしもしはいはい”から始まった携帯電話は、メールやWebブラウザが利用できるようになり、現在はスマートフォンへパラダイムシフトしている移行期間といえる。ケータイは今後、もっと複合的な存在になるだろう。例えばiPhoneは、携帯電話なのかインターネットデバイスなのか、または音楽プレーヤーなのか、とらえ方は人それぞれで、実に複雑で複合的な存在だ」(山下氏)

 また、スマートフォン市場の拡大条件として、“エコシステム・ビジネスサイクルの構築”“多様なサービスと商品の開発”“持続成長を可能とする競争環境”を挙げ、ドコモが環境整備に力を入れていくことを約束した。

 具体的には、スマートフォン向け料金プランや販売施策を強化し、サービス用のプラットフォームをコンテンツプロバイダへ開放する。また、マイクロソフトと同じく開発者コミュニティのサポートも目指す。山下氏はそれぞれの詳細について、2009年初頭に発表することを明らかにした。

 「ユーザーには、スマートフォンで何ができるのか、何が面白いのかを工夫して訴求しなければならない。またエコシステム拡大のため、iモードで使われている課金・認証システムをオープンプラットフォーム向けに提供するなど、スマートフォン向けのサービス基盤も提供する。さらに、開発者向けのアプリケーションコンテストなども行う予定だ。法人、個人を問わずいろいろなアイデアを集めて、それらをビジネスにする仕組みを作りたい」(山下氏)

 このようにオープンプラットフォームへの取り組みを強化するドコモは、それが独自の進化を遂げた日本のケータイを世界に広げるチャンスにもなると話す。

 「ケータイは成熟期を迎えているが、スマートフォンへの取り組みで新たな側面を迎える。ガラパゴスと呼ばれる日本のケータイだが、決して進化の袋小路に入っているわけではなく、その先進性が世界の水準と欠け離れているからだ。その先進性を世界に広げるには、オープンプラットフォームへ打って出るしかない。ドコモはそのチャレンジを続けていく考えだ」(山下氏)

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