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2008年12月08日(月) 02時50分

振り込め詐欺対策強化の中、司法関係者の犯行産経新聞

 今年1〜10月だけで、すでに被害件数約1万8000件、被害総額は約252億円の振り込め詐欺。今年6月には「振り込め詐欺被害回復分配金支払い法」が施行された。また、警察庁と全国銀行協会などが来年1月をめどに、悪用口座の名義人情報を銀行間で共有、通報体制をとる「振り込め口座監視網」をスタートさせるなど、被害者救済と被害防止の両面が強化されつつある。

 そんな中、偽造有印私文書行使容疑で京都家裁書記官の広田照彦容疑者が逮捕された事件は、“法の番人”の一員が自ら、抜け穴をくぐり、救済策を逆手に取った犯行といえる。

 6月施行の同法は、犯罪グループを相手に訴訟を起こさなくても、被害金の返還を受けられるようにしたもので、凍結された約10万件の口座に残る約50億円が被害者に返還される見通し。犯罪グループの特定が困難な上、訴訟に費用や時間がかかるため、泣き寝入りすることが多かった被害者救済に道を開くものとして期待されている。

 警察庁などによると、振り込め詐欺で用いられた口座の売買は今年に入り10月までで2376件が摘発され、昨年1年間の1650件を既に超えている。今回、問題となった口座も警察が凍結を要請、銀行側の判断で凍結していたものだった。広田容疑者はこの口座の凍結解除のため、判決書も偽造した疑いがある。

 振り込め詐欺撲滅に向け、官民一体となった動きのなか、法律に明るく、手続きや実務に精通した司法関係者の犯行とあって、振り込め詐欺の防止と被害者救済のため、一層の強化策検討が迫られそうだ。

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