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2008年12月08日(月) 18時00分

「突然の経営悪化」で企業は内定を取り消せるのか 場合によっては法令違反の可能性もMONEYzine

 いったん採用を決めた学生の内定を企業が取り消すケースが相次いでいる。全国のハローワークが把握した大卒の内定取り消し件数は、先月25日時点で302人まで増えている。その後も増加しており状況は深刻だ。これを受けて民主党は5日、「内定取り消し規制法案」など緊急雇用対策の原案をまとめた。内定取り消しは社会通念上相当と認められる場合以外は無効とし、悪質なケースは企業名の公表を政府に求めるという内容だが、現段階では経営不振という理由で企業側が、勝手に内定を取り消せるものなのだろうか。

 就職活動において内定とは、採用試験などを経た後、企業が合格者に内定通知書を交付し、合格者が誓約書などの書面で雇用契約を交わしている状態のこと。これは「解約権留保付労働契約」と呼ばれ、一種の労働契約のことで、正式に労働契約は成立している。つまり労働契約がすでに成立しているので、内定の取消しは、原則として「解雇」になる。したがって、合理的な理由を欠く取消しは権利濫用で無効となるが、問題は通常の労働契約に比べて解約理由が広く認められていることだ。つまりすでに正社員として働いている従業員に対する解雇事由よりも合理性が認められる範囲が広いのだ。

 採用内定の取り消しする場合に認められているものは、提出書類に重要な虚偽記載があった場合や卒業できなかったり、健康状態の悪化や就業規則上の解雇理由となるような行為があった場合などだ。また「著しい経済事情の変化があった場合」も合理的と認められてはいるが、「経営不振という理由だけで内定を取り消せるとは限らない」というのが社労士や弁護士など多くの専門家の意見だ。日本経団連も今月に入り会員企業に対し、「内定取り消しは法令違反となる可能性が高い」として、新卒者の内定取り消しを行わないよう求める文書を通知することに決めた。今後は会員企業に安易な取り消しを行わないよう徹底する方針で、企業は経営状況が厳しくとも簡単に内定取り消しを行うと非難を浴びそうだ。

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