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2008年12月07日(日) 09時00分

再編が加速する「医薬品卸業界」の給料を公開 立ちはだかる年収1000万円の壁MONEYzine

■再編が続く医薬品卸業界

 医薬品卸業界の再編が止まらない。メディセオ・パルタックホールディングス(HD)とアルフレッサHDは、09年4月に持株会社アルフレッサ・メディパルHDを新しく設立して経営統合する。業界1位と2位の合体。売上高が4兆円規模の企業グループの誕生だ。

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 仙台など東北が主たる拠点のバイタルネットも、近畿を地盤とするケーエスケーとの経営統合を予定。こちらも09年4月にバイタルケーエスケーHDとしてスタートすることで、アルフレッサ・メディパルHD、スズケン、東邦薬品に次ぐ業界4位に躍り出る。

 そもそも、医薬品卸はM&Aが最も活発な業界の1つ。三星堂とクラヤ薬品、それに東京医薬品が合併して誕生したクラヤ三星堂は、その後、メディセオHDを設立。日用雑貨卸大手のパルタックも買収したことでメディセオ・パルタックHDになった経緯がある。そのパルタックは、医薬・芳香剤などを手がける小林製薬の卸子会社コバショウと合併しパルタックKSになっているが、コバショウ獲得を巡っては、スズケンと争奪戦が繰り広げられたものだ。

 アズウェル(現アルフレッサファーマー)と福神(現アルフレッサ)の経営統合で誕生しているアルフレッサHDも、名古屋のシーエス薬品を子会社化するなど積極展開。合併・買収を重ね、サンエスから社名変更したのがバイタルネット。M&Aと無縁な医薬品卸はないといってもいい状況だ。日用品・化粧品卸のあらたも、3社が経営統合して誕生している会社である。

 なぜ、医薬品卸の再編が進むのか。厳しい経営環境が要因であることは言うまでもない。
 売上総利益(粗利益)率は10%内外、営業利益率は1%台ないしは、1%を切る、というのが医薬品卸各社の経営実態。薬の売買差益がゼロに等しいことをもの語っているといっていいだろう。

 風邪薬といった大衆薬はともかく、医療用医薬品は国によって薬価基準が決められており、卸が調剤薬局や医療機関に販売しても利益はほとんど出ない、というわけ。そこで頼みの綱となるのが、取扱量や目標達成率によって製薬メーカーから支払われるリベートやアローアンス(販売促進費)。そのためにボリュームを求めて合従連衡が繰り広げられるというわけだ。

 目まぐるしいほど買収・合併・統合が続いているだけに、給与も気になるところ。基本的に、各社バラバラの給与体系は、グループ内の高い会社に合わせているようだ。新しくグループに集結した従業員の志気を高め、M&A効果を早く実現したい、ということだろう。

■医薬品卸業界の従業員給与は? 

 では主な医薬・日用品・食品卸の従業員給与を見ていこう。個々の会社別では、従業員の平均年間給与トップはアルフレッサHD。以下、メディセオ・パルタックHD、スズケン、フォレストHDなどと続く。バイタルネットとケーエスケーでは、平均年齢が高いケーエスケーの方がやや上回る。


 鉄鋼関係の卸は、JFE商事898万円(平均年齢42・6才)、阪和興業879万円(37・4才)、岡谷鋼機865万円(40・8才)、住金物産836万円(41・0才)など。エネルギーの卸では、伊藤忠エネクス924万円(41・1才)、岩谷産業840万円(39・8才)。

 食品関連では、菱食603万円(37・9才)、伊藤忠食品585万円(39・6才)、日本酒類販売568万円(41・33才)、加藤産業556万円(36・8才)、日本アクセス561万円(41・3才)などとなっている。

 こうしてみると、医薬品卸は、鉄鋼やエネルギー関連の卸よりは給与水準が低く、食品卸とは同レベル、ないしは若干上といっていいだろう。いずれにしても、業界トップのアルフレッサの898万円(平均年齢46・9才)からいえば、医薬卸で年収1000万円に到達するまでには、かなりの勤続年数がいることだけは間違いない。

 次に調剤薬局の経営やその従業員の給与を見ていこう。医薬品卸の主戦場は医療機関、そして調剤薬局。調剤薬局の経営やその従業員の給与はどうか。
 調剤薬局の基本的な売上は、医療用医薬品の薬価と調剤報酬で成り立つ。医薬品ごとに仕切りが安い卸会社を選択したり、処方箋の持込が多い医療機関の医師が選択する薬の仕入れを先読みするのが経営のポイント。

 とはいえ、卸同様に薬価の売買差益は限りなくゼロに近いというのが現実。薬の販売による利益は期待できないことから、調剤技術料など調剤報酬依存の1本足経営といっていいだろう。その調剤報酬も国によって決められており、自由裁量の余地は少ない。

 メディカルシステムネットワークと日本調剤が500万円台。以下、クオールやクラフトが続き、アインメディカルシステムズは400万円を切っている。卸より平均年齢は若いものの、薬剤師を含めての給与平均だけに高給とはいえないだろう。店舗運営のメインとなる薬剤師ともなれば、下限は700〜800万円とされる。

 医療用医薬品に限っても市場規模は8兆円と大きいが、国による医療費抑制政策が続いており先行き不透明。大衆薬については原則、新たな資格者「登録販売者」による販売も可能になり、スーパーなどの参入も本格化する。医薬品の流通部門は、さらなる再編が続くといっていいだろう。

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(ビジネスリサーチ・ジャパン)

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