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2008年12月07日(日) 22時21分

漂流中に日本海軍「雷」が救助、元英大尉「恩人」の墓訪問読売新聞

 昭和戦争中、現インドネシア・ジャワ島のスラバヤ沖海戦で乗艦が撃沈されて漂流中、日本海軍の駆逐艦「雷(いかづち)」に救われた元英国海軍大尉サムエル・フォールさん(89)が7日、埼玉県川口市にある「雷」艦長だった工藤俊作・元海軍中佐の墓を訪れ、66年ぶりに“再会”を果たした。

 1942年3月、フォールさんらが乗った英軍艦「エンカウンター」など2隻は攻撃を受けて沈み、乗員のうち422人が24時間以上も油まみれの海で漂流した。

 近くを通りかかった工藤さん率いる「雷」が漂流者たちを救助。雷の乗組員は、重油まみれのフォールさんらの体を丁寧にふき、衣服や温かい食事も与えた。

 フォールさんは帰国後、自らの体験を英国内で紹介し、知人を通じて工藤さんの消息を捜した。2003年には自ら来日。しかし、工藤さん自身が周囲に話さなかったこともあり、行方が分からないままだった。救助の秘話を耳にした作家の恵隆之介さんたちが、工藤さんの生まれ故郷である山形県高畠町などを訪ね歩き、工藤さんは1979年1月、77歳で亡くなっていたことが判明。これを伝え聞いたフォールさんは今回来日を決意したという。

 「サンキュー」。墓前でフォールさんは、墓をじっと見つめ、心の中でそうつぶやいた。「助けられなければ死んでいた。この体験は一生を通じて、忘れることはない」。フォールさんは、墓参り後の記者会見で、そう語った。

 この日は、工藤さんの遺族や雷の航海長だった谷川清澄さん(92)(静岡県伊東市)も参列。谷川さんは「工藤さんは、口数が少ないが落ち着いて判断を下す立派な人だった。心から感謝され、本当にうれしい」と話していた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081207-00000040-yom-soci