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2008年12月06日(土) 16時00分

禁煙運動、不況、増税の三重苦 海外に活路を見出す日本たばこ産業の戦略MONEYzine

 たばこ事業法によりタバコ製造の独占を認められ国内で唯一、タバコの製造を行っている日本たばこ産業(JT)。独占事業だけに売上高は堂々たる数字だ。全事業の連結決算でみると、2008年3月期の売上は6兆4097億円にも上る。この金額は日本企業を代表する流通大手のセブン&アイ・ホールディングスの5兆7524億円、イオングループの5兆1674億円をも上回る。

 しかし国内のタバコ産業の現状をみる限り、JT経営陣は決してあぐらをかける状況ではない。というのも先進国を中心とした世界的な禁煙運動の高まりの影響を受け、日本でも禁煙ブームが到来。ここ数年でオフィスやレストランでは多くが禁煙を開始し、コーヒーショップや居酒屋でさえ全面的に禁煙を打ち出す店も出てきた。これに加えて、折からの世界金融危機による国内景気の減速が消費者の財布を直撃、さらに09年度の税制改正案では消費増税が先送りされ、1箱40〜60円程度のたばこ増税が焦点になってきた。JTは禁煙運動、不況、増税と三重苦に今、悩まされているのだ。

 国内景気に関しては今後、中・長期的には上向く可能性もあるが、禁煙ブームや増税は免れそうもない。将来的に国内のタバコ市場が拡大していくことは難しい。そこでJTが企業として活路を見出しているのが海外販売だ。08年3月期のタバコ売上の内訳は国内が3兆3,623億円、海外が2兆6399億円。すでに売上の4割を海外販売が占めており、ロシア、欧州などで好調に推移している。JTの木村宏社長もメディアに対して 「海外タバコ事業は今期から2ケタの増益が可能」 と発言しており、海外販売への期待は高い。JTは世界でのタバコ販売シェアでみると、フィリツプ・モリスを率いる米アリトリア・グループ、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社に続き現在第3位に位置しており、07年4月に英ガラハー社を買収してからは、2位のブリティッシュ・アメリカン・タバコ社に迫る勢にある。今後は禁煙運動がまだそれほど浸透してないアジア市場を狙い、海外シェアを増やしていく構えだ。

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