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2008年12月06日(土) 11時00分

被害者参加制度:地裁で被害者参加の模擬裁判員、裁判実施 /茨城毎日新聞

 ◇遺族らの気持ち、どう影響 運用後も続く模索
 事件の被害者や遺族が刑事裁判で被告に直接質問したり、量刑についての意見を述べる「被害者参加制度」が今月始まった。実際に被害者が裁判に参加するのを前に、水戸地裁は、被害者が参加した模擬裁判員裁判を実施した。公平・均衡が求められる裁判の中で、被害者の気持ちを量刑に反映させるべきか、6人の裁判員の意見を大きく左右することになるのか、運用開始後もあるべき姿について模索が続きそうだ。
 2〜4日に開かれた模擬裁判は、男(49)が酒に酔った状態で車を運転し、対向車に衝突して男性(57)を死亡させたという危険運転致死事件が審理された。死亡した男性の妻役の女性が被害者参加人として、弁護士とともに検察官の横に座った。
 弁護側、検察側による被告の尋問後、妻が直接被告に問いかけた。「事故の直後の夫はどういう状況だったか」「夫を死なせたことをどう思っているのか」。新制度によって可能になった一幕だ。さらに、検察官が懲役8年を求刑後、妻が意見陳述し「男は反省していないと思う。二度と遺族を出さぬよう、できるだけ長く刑務所にいさせるべき。懲役20年を下してもらいたいと思います」と訴えた。さらに被害者の弁護士が、再犯の可能性や遺族感情について補足し「被害者の怒りや悲しみを反映しない裁判は正義にかなっているとは言えない」と述べた。
 評議では懲役5〜8年に意見が分かれ、最終的には多数決で懲役6年の判決が決定。減軽理由として、被告に家族がいることが考慮された。
 模擬裁判に裁判長として参加した河村潤治判事は「今回は被害者の意見で評議が左右されることはあまりなかったが、被害者や事件の性質により変わってくると思う。被害者が検察官より少し重く求刑した場合は影響があるのではとも思った」と振り返った。
 被害者参加の対象となるのは、殺人や傷害致死、交通死傷事故など。水戸地裁によると、07年の刑事裁判のうち、被害者参加制度の対象になる事件は371件で、そのうち裁判員裁判の対象になるのは42件にのぼるという。【山崎理絵】

12月6日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081206-00000002-mailo-l08