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2008年12月05日(金) 00時00分

携帯の一律禁止は問題読売新聞

 大阪府の橋下知事が「小中学校への携帯電話持ち込み禁止」を打ち出した。だが、一律に禁止しても大丈夫だろうか? 子供のセキュリティーのために、親が携帯電話を持たせる場合もあるからだ。(テクニカルライター・三上洋)

実際は多くの小中学校が持ち込み禁止

 大阪府の橋下知事が公立小中学校への携帯電話持ち込みを禁止する方針をを打ち出した。これは大阪府教育委員会がまとめた提言によるもので、原則として小中学校では持ち込み禁止、高校では校内での使用禁止とするもの。これについて河村官房長官や塩谷文部科学相なども歓迎するコメントを出している。

 このような宣言が出ると「今まで学校では携帯電話は許されていたのか?」と思ってしまうが、実際には多くの小中学校が携帯電話の持ち込みを禁止している。大阪府教育委員会の調べでは、小学校の88%、中学校の94%が携帯電話持ち込みを禁止にしている。これが守られていないため、改めて一律に禁止するルールを作ろう、というのが橋下知事の趣旨だ。

子供の防犯ツールとしての携帯電話

 小学校高学年と中学生は、かなりの割合で携帯電話を持っているのが現実だ。小学生高学年では、塾通いをきっかけに親が携帯電話を持たせる場合が多い。小学生の塾は、夕方5時か6時ごろからスタートするところが多いため、行き帰りの安全対策に携帯電話を持たせている。クラブ活動から直接塾へ行く生徒は、学校へ携帯電話を持ち込む必要があるだろう。

 防犯ツールとして携帯電話を持たせる親もいる。携帯電話各社のキッズケータイは、防犯ブザーを装備するなど、子供のセキュリティ対策も重視している。たとえば最新機種では防犯ブザーを押すだけで、親へ自動的に通話する、位置情報を自動的にメールするといった機能がある。電車で通学する子供を持つ親にとっては、携帯電話は防犯ツールとしても重要だと言えるだろう。

 共働き世帯が増加したことも、子供の携帯電話所持率アップに影響している。親が働いている時間でも子供との連絡を取れるようにするため、子供に携帯電話を持たせる親が多い。学校の行き帰りにメールをさせる親もいる。携帯メールが親子のコミュニケーションにも役立っているのだ。

一律禁止ではなく柔軟な許可制度が必要

 ここからは筆者の個人的意見になるが、一律禁止ではなく、届け出さえすれば携帯電話を持ち込んでもOKとする制度が必要だろう。東京都内のある中学校では、電車通学する生徒に対して携帯電話の持ち込みを許可している。登校すると職員室へ持って行って携帯電話を預け、帰りに返してもらうという方式にしている。これならクラブ活動から直接塾へ行く、という時でも子供に携帯電話を学校へ持ち込める。

 子供が携帯電話を使うことに対しては、出会い系などの有害サイトの影響、SNSで犯罪に巻き込まれるといった心配がある。しかし有害サイトについては、来年2月から携帯電話各社による未成年への強制フィルタリング導入が始まる(以前の記事「携帯フィルタリング適用がようやくスタート」)。これによって有害サイトからの悪影響は、ある程度は防止できるだろう。

 現実問題として、子供たちは携帯電話を重要なコミュニケーションツールとして活用しており、携帯電話を持つこと自体を一律に禁止するのは難しい。それよりも初めて携帯電話を持つ小学生や中学生のために、携帯電話の安全な使い方や、有害サイトの危険性などを教えることが重要だ。学校の授業の妨害になるようではダメだが、家庭や子供の事情に合せて、学校への持ち込みを許可するべきではないだろうか。

http://www.yomiuri.co.jp/net/security/goshinjyutsu/20081205nt17.htm