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2008年12月05日(金) 08時05分

【Re:社会部】一歩踏み出すきっかけに産経新聞

 年末が近づくと、毎年思いだす事故があります。

 今から7年前の12月29日。アルバイト先の忘年会を終えた女子大生2人が飲酒運転の車にひかれ、死亡しました。運転していた男は、仕事納めで同僚と酒を飲んだ帰りでした。

 取材を通じて1人の女性の遺族と深く接するようになりました。

 「娘の好きなもので飾りたい」と遺影ではなく、高校生のときに書いた油絵の自画像が飾られた祭壇。両親と2人の兄。家族の写真を何枚も見せてもらいましたが、女性の屈託のない笑顔に包まれ、一家は幸せそのものでした。

 事故から半年後。危険運転致死傷罪などで起訴された男に、懲役7年の実刑判決が下りました。

 「(求刑の)8年でも短いと思っていた」「娘の命はそんなものだったかと思うと悔しい」…。

 判決の後、両親が口にした言葉には、やるせなさがつまっていました。その後娘の死を受け入れることができず、一家は数年間バラバラに生活したと聞きました。

 1日から被害者参加制度が始まりました。被害者や遺族が法廷に入り、検察官のそばで被告人質問や求刑を行うことができます。

 公判で被告に質問していれば、あの遺族は救われたのか。それは分かりません。ただ、事故と向き合い、残された人生の一歩を踏み出すきっかけにはなったかもしれません。(真)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081205-00000077-san-soci