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2008年12月04日(木) 19時00分

WSJ-グーグル、緊縮経営に着手=2ダウ・ジョーンズ

シュミットCEOは、グーグルがこうした分野のエンジニアリング資源と営業資源に軸足を移し、成功の見込みの薄いプロジェクトを避けている、と述べた。その上で、同社が単に「いじくり回している」プロジェクトのチームは「人員が引き抜かれて、自然に縮小する」とした。

同社は今秋、エンジニアリングからフードサービスまで多様な業種の契約社員を現在の1万人前後から「大幅に」削減する計画を発表した。その時期や主要な対象業務は明らかになっていない。

グーグルは社員特典も徐々に削減し始めた。ニューヨークの拠点ではカフェテリアの無料時間帯を縮小し、伝統的なアフターヌーンティーも打ち切った。グーグルの広報担当者は、同社の文化の根本は変わらない、として「われわれの独自の社風は、グーグルをグーグルたらしめるものの根幹をなしている」とコメントした。

グーグルは、米マイクロソフト(Nasdaq:MSFT)や米ネット競売大手イーベイ(Nasdaq:EBAY)などの他社にすでに降りかかった問題への対応に取り組んでいる。グーグルの7-9月期決算は31%の増収と好調だったが、それでも05年通期の成長率(92%)は下回った。だが、手元現金140億ドルを保有し、米オンライン広告市場でほぼ30%のシェアを収めた同社は、この景気低迷を乗り切るのに他社よりかなりよい位置にいると、ウォール街のアナリストらはみている。

それでも、社内の変化はグーグルにとって大きなシフトとなっている。同社はその草創期に、株主の短期的な利益より長期目標を常に優先させる方針を示した。気前のよい社員特典、ビリヤード台やバレーボールのコートなどの設備が整った職場、サイドプロジェクトにも時間を費やせるという約束で、同社は最高のエンジニアの獲得を図った。現役または引退した製品エンジニアらによると、グーグル社内では、あるプロジェクトが最終的にもうけを出せそうかどうかについて論じるのは下品なことと考えられていた。最も重要な評価基準は、その新しいアイデアがネットユーザーの経験に有益か、という点だった。

この“何でもあり”の社風が数千に及ぶプロジェクトを生み出した。同社がこれまで立ち上げたのは、膨大な数の書籍のコンテンツをデジタル化し、検索できるようにするプログラムや、「オーカット」と呼ばれるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、三行広告のリスティングサービス「グーグル・ベース」、地球の衛星画像を閲覧できる「グーグル・アース」、検索クエリーに対してテキストメッセージや携帯電話で回答を得る方法などがある。電子メールの「Gメール」など、大当たりしたサービスもあった一方、デジタル音楽配信やネット上のデータ保存サービスの実験を含めて、そのほか多数のプロジェクトが日の目を見ることはついぞなかった。

こうした失敗も、資金があり余っている時代には問題にならなかった。グーグルの売り上げは05年に92%、06年に73%、それぞれ増加した。だが、同社は07年7月、採用に資金をかけすぎ、4-6月期の営業利益が前年同期比で減少したと発表。まれにみる失策となった。

グーグルは財務の計画・分析を担当する新たな副社長にフランソワ・デルピーヌ氏を迎え入れた。同氏は予算編成の標準化と管理の厳格化に努めた。経理は1人当たりの売り上げが多いグループにより多くの新入社員を割り振り始めたと、事情筋は語った。また、売り上げ予想の精度を上げるため広告営業担当者にノルマを課し、能力給の対象も拡大したという。

サーバーコンピューターであれ欧州行きのビジネスクラス航空券であれ、同じ項目についてはどの部門も同じ額の予算を組むことを求められるようになった。

グーグルは資格要件を満たした人材をすべて雇用するという向こう見ずな採用慣行もやめた。昨年10-12月期の新規採用者は889人と、前年同期(1300人前後)から減少した。

開発中のプロジェクトの管理を向上させるため、幹部らは技術部門の副社長らに、管轄部門が手がけるプロジェクトのなかで最も見込みの高いものを20、ランク付けするように要請した。グーグルの元製品マネジャーらによると、このリストに入ったプロジェクトにはかなりの資源が与えられたという。リストに漏れたプロジェクトは、以前より技術支援を受けられる公算が小さくなった。

グーグルの07年10-12月期は、売上高と純利益がアナリスト予想を下回り、景気減速によるオンライン広告への打撃に対する懸念が広がった。だが、同社は今年1-3月期に30%、4-6月期に35%の大幅増益を達成し、検索市場におけるシェアも他社から奪い続けた。グーグルは、景気悪化による影響はまだ受けていない、としている。

(続く)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081204-00000026-dwj-biz