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2008年12月04日(木) 12時32分

<教科書検定>概要公表へ 議事録は作らず 文科省毎日新聞

 文部科学省は4日、非公開としてきた教科書検定の審議内容について、検定終了後に概要を公表することを盛り込んだ検定制度の改定案をまとめ、教科用図書検定調査審議会の作業部会で了承された。来年度の検定から適用される見通し。昨年、沖縄戦の集団自決を巡る高校教科書検定で審議の密室性に批判が集まったことなどを受けた措置だが、議事録は作成せず詳細は公開しないため、さらなる公開を求める声も出そうだ。

 現行制度では、教科書会社からの申請に対し、文科省の教科書調査官が「調査意見書」と合否判定案を作成。それを基に、同審議会の日本史など分野別の小委員会と、教科別の部会で議論して検定意見書をまとめる。公表していたのは(1)申請教科書(2)検定意見書(3)修正表(4)教科書見本−−で、「なぜその意見が導かれたか」につながる情報は含まれなかった。部会や小委員会は議事録も作成せず、文科省は「公表すれば(委員らの)自由な意見交換を妨げる」と説明してきた。

 改定案によると、調査意見書と判定案を公表。各部会・審議会で出たどのような意見により何が決まったのかが分かる「議事概要」も作成し、検定作業後に何らかの方法で公表するとした。だが、意見交換の詳細などが分かる議事録は作成せず、発言者の氏名は公表しない。

 一方、審議会委員がどの部会や小委員会に所属しているかは公表していなかったが、検定作業後に公表する姿勢を示した。沖縄戦の問題を巡っては「調査官の人選経緯などが不透明」との批判もあったが、調査官の氏名と略歴を公表する。

 さらに「委員に沖縄戦の専門家がいなかったため、調査官の意見がそのまま通ったのでは」という指摘があったことなども踏まえ、部会や小委員会であらかじめ重点事項を定め、専門委員を増やしたり、外部の専門家の意見を聞くことを可能とする改善策も盛り込んだ。

 検定意見書の伝達方法についても、現在は教科書会社が意見書を渡されたその場で質問しなければならないが、内容を伝えた後に質疑応答の場面を設けるなどの改善を行う。

 文科省は「(検定の)緊張感が高まり信頼性も上がる」と説明している。【加藤隆寛】

 ◇ことば 沖縄戦を巡る教科書検定問題

 07年3月、沖縄戦の集団自決に日本軍の強制があったと記述した高校教科書に文部科学省が検定意見を付け、教科書会社は修正・削除。沖縄県民らの反発が強まったことを受けて政府が軌道修正し、当時の渡海紀三朗文科相が訂正申請に応じる姿勢を示したため、教科書会社は11月に訂正申請。再度行われた検定で「(日本軍の)関与」などの表現が認められた。渡海文科相は今年2月、教科用図書検定調査審議会に制度のあり方についての審議を要請していた。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081204-00000051-mai-soci