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2008年12月04日(木) 08時45分

温水洗浄便座に注意!発煙発火92件相次ぐ産経新聞

 温水洗浄便座の発煙発火事故が平成8年4月から今年11月中旬までに計92件と相次いでいたことが3日、経済産業省所管の独立行政法人・製品評価技術基盤機構(NITE)の調べで分かった。漏水やヒーターが暖まらないなどの不具合が長期間放置されて事故に至ったケースも後を絶たず、メーカーや経産省が注意を呼びかけるが、「ユーザーに電化製品という認識が低く、不具合のあるまま単なる便座として使い続けられてしまう」と苦慮している。

  ■写真で見る■ 約17年間使われ、経年劣化による不具合で焼損した温水洗浄便座

■異音

 パチパチパチ…。

 広島県内の民家で、トイレから異音がしたのは、昨年11月6日正午ごろ。気付いた家人がトイレをのぞいたところ、すでに炎が上がっており、あわてて水をかけて消し止めた。

 出火原因は23年間使い続けたINAX製の温水洗浄便座だった。

 経産省の調査で、便座を固定するゴム台が外れて不安定になったまま使い続けたため、便座と本体をつなぐ部分が破損。便座ヒーターにつながる電気コードに長年にわたって負荷がかかり、断線・出火したことが分かった。

 普段は誰もいないトイレ内での事故に、経産省製品安全課は「気付かないままだったら、大きな火災になっていた可能性もある」と話す。

■寿命

 NITEが報告を受けた92件の事故のうち、製品に原因があったものは32件。電源部品のメッキ不良によって発煙・発火したケースがほとんどだった。

 一方で、洗浄や消臭の機能が故障したり、異音がしているのに使用を続けたために事故につながったものは4件。長期間の使用で生じた不具合によるものも3件あった。

 一般家電の“寿命”ともいえる使用期間の目安は通常10年とされるが、広島での事故を含め、先月末に5件の事故が明らかになったINAX製品は、いずれも18年以上にわたって使われ続けていた。

 会見したINAXの担当者は「(事故原因は)経年劣化による不具合と、放置したまま使用を続けた状況が複合した」と説明。「不具合があるのに使い続ける危険性をユーザーに伝え切れなかった」と悔やんだ。

■認識

 後を絶たない事故に、業界団体やメーカーなどが注意を呼びかけてきたが、消費者への周知は進んでいない。

 業界関係者は「ヒーターが暖まらないなどの不具合があっても、便座としての機能そのものが失われないため、消費者に『家電製品』としてとらえられにくい」と指摘。わずかな不具合が長期間にわたって進行することも危険性が認識されにくい原因という。

 内閣府の調査では、温水洗浄便座の世帯普及率は平成15年に5割を突破。今年は7割に迫り、「生活必需品」となっている。

 経産省製品安全課は「不具合はコード断線などが起きている可能性があり、電源をつないだままにすると危険。10年以上使うと不具合も増えるので、気付いたらメーカーに相談してほしい」としている。

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