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2008年12月04日(木) 10時10分

「服装で不合格」神奈川・神田高の判断、支持の声相次ぐ読売新聞

 神奈川県立神田高校(平塚市)が入試で服装の乱れなどを理由に受験生を不合格にし、渕野辰雄前校長(55)が更迭されたことに対し、学校側の判断を支持する電話やメールが県教委などに相次いだ。

 不合格者は2004年度以降の3か年度で計22人。試験監督らの「まゆをそっている」「スカートが短い」などの報告が基になった。校長更迭の理由は、こうした基準で選考されると公表していなかったことだ。

 「入試で服装や態度を正すのは常識」(64歳男性会社員)。「服装などに問題がある生徒は、他の生徒に迷惑をかける可能性が高い」(45歳主婦)。読売新聞横浜支局に寄せられた約300通の9割近くが学校擁護の意見で、県教委に来たメールなどでも約1400通の約9割は学校側の判断を支持する内容だという。

 中央教育審議会副会長の梶田叡一・兵庫教育大学長(67)は「社会の秩序を乱しても構わないという個人主義が広がっていることに危惧(きぐ)を抱く人が声を上げたのだろう」と分析する。

 渕野前校長が教頭として同校に赴任した02年当時は、校内の火災報知機が鳴らされて授業が中断することが何度もあった。地元自治会長も「たばこを吸いながら登下校する生徒もいて、何回も火がついたたばこを庭に投げ込まれた」と話す。

 学校側は立て直しに取り組み、問題のある生徒と昼食を共にしたり、PTAと協力して校内の見回りを行ったりした。地域にも学校便りを回覧し、「生徒をしかって」と頼んだ。こうした努力で、120人を超えていた中退者は04年度には88人に減った。

 渕野前校長は「まじめな生徒を守りたかった。安心・安全な学校生活を送らせてやりたかった」と振り返り、「服装なども選考基準だと分かれば、面接にはきちんとしてくる。普段の様子を知るには公表せずにチェックするしかなかった」と話す。

 今回の問題について、県教委の判断を支持する意見もある。教育評論家の尾木直樹さん(61)は「人生を決める入試だからこそ、だまし討ちのようなことは許されない」という。

 だが、「問題のある生徒が多く、きめ細かく指導しようとすると仕事は限りなくある。先生方は限界だった。ルールを逸脱した形になったが、苦渋の決断だった」と渕野前校長は打ち明ける。現場の悩みは深い。(横浜支局 松本英一郎)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081204-00000019-yom-soci