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2008年12月04日(木) 18時30分

【総連事件公判】「緒方被告は『1リットルの涙』を読んで否認に転じた」と検事産経新聞

 《緒方重威(しげたけ)被告の弁護人は、緒方被告の冒頭陳述に沿って尋問を続けた。尋問は、「緒方被告から供述調書の内容を一部削除してほしいといわれた」とするA検事の証言に移った》

 緒方被告の弁護人「具体的には、どこを削除してほしいといわれたのですか?」

 A検事「(平成19年)4月13日に(朝鮮総連代理人の)土屋(公献弁護士の)事務所に行く前にしたやりとりについてです。満井被告から『違約金が必要』と聞いていた部分です。私が『いつ、どうやって聞いたか』とたずねると、緒方被告は『4月上旬から中旬と思いますが、満井被告がフラッっと(自身の)事務所によることもあるので、事務所か電話かハッキリしない』ということでした。緒方被告は『そう言ったのは間違いないが、そういう言葉か分からないので、(このやりとりが)会話として調書に作成されるのは嫌だ』ということでした」

 緒方被告の弁護人「もう1点は何ですか?」

 A検事「『(総連中央本部売買資金の投資について)○○(東京都内の航空ベンチャー会社社長の実名)には聞いてみたけど、無理だった』との供述になっていました。5月31日の(売買取引)契約成立時点では、(当初の供述調書の通り)○○さんの出資のメドは立っていなかったはずなのですが、緒方被告は『削除してくれ』と言いました」

 緒方被告の弁護人「緒方被告の供述内容とあまりにも違うので、削除要請したのが真相ではないのですか?」

 A検事「違います」

 《A検事はキッパリ否定。質問は、7月18日に緒方被告らは詐欺容疑で再逮捕された後の取り調べに移った》

 A検事「18日の夕食後の取り調べで、緒方被告は『弁護人から、よく考え直せ。頑張れといわれた』と語っていました。夕食前の取り調べとはだいぶ雰囲気が違っていました。(弁護人との接見を後えた後の)夕食後には固くなりました。『自認調書にしてください』と言ったので、『気持ちが揺れたのではないか』と思いました。緒方被告は、『裁判所で1リットルの涙という本を読んだ。難病の子が一生懸命生きているのを読んで、裁判を早く終わらせようとするより、信念を貫こうと思った。否認したい』と言っていました」

 《『1リットルの涙』とは、中学生の時に発症した難病と闘った若い女性の実話をもとにした小説で、女優の沢尻エリカさん主演でテレビドラマになったほか、映画化もされた》

 緒方被告の弁護人「(緒方被告のことを)『切々と訴えていた』と思いましたか? 『バカな奴だ』と思ってたのではないですか?」

 A検事「はなから思っていません」

 緒方被告の弁護人「そう思ってたんじゃないですか?」

 A検事「私もその本を買って読んでみましたが、緒方被告がそう考える(契機になる内容)とは思いませんでした」

 《質問は他の取り調べ内容に移った。弁護人の質問は、検察官の取り調べのようにも聞こえる》

 緒方被告の弁護人「(緒方被告に対して)『早期の社会復帰が得策だ』と言ったことはありますか?」

 A検事「そんな言い方はしていません。緒方被告は『信念を貫く』と言うので、私は『それが本当なら良いですが、ウソなら意味がありません。世間体や家族へのプライドがあるだろうけれど、法廷でばれてしまいます。良いことはありません』と言いました」

 緒方被告の弁護人「要は、『(罪状を)認めれば早く終わる』と言ったんですね」

 A検事「そうではありません」

 緒方被告の弁護人「『緒方被告が船長である』と言ったことはありますか?」

 A検事「一切ありません」

 緒方被告の弁護人「『自白をねじまげて否認した』と口走ったことはないですか?」

 A検事「ありません」

 緒方被告の弁護人「緒方被告の(記載した)ノートにはあります。緒方被告はウソを書いたのですか?」

 A検事「そうだと思います」

 《緒方被告が取り調べ内容を自分で記したとされる“獄中日誌”の内容について、取り調べした担当検事は虚偽内容だと主張した》

 緒方被告の弁護人「『嘘つきと立証する。そうしたくなければ、公判を早く終わらせれば』と言ったことはないですか?」

 A検事「言っていません。緒方被告は『否認した場合、検察官はどう立証するか?』とたずねてきました。私は『調書に不同意なら、相当数の証人を呼ばないといけない。これまでの(満井被告との)2人の関係。何をやってきたかも立証しないといけない』と言いました」

 緒方被告の弁護人「具体的に(満井被告が社長だった)「三正」の取引について話したのではないですか?」

 A検事「言ってませんん」

 緒方被告の弁護人「『その汚い取引を法廷でバラす』と言ったのではないですか?」

 A検事「そういう趣旨では、言っていません」

 緒方被告の弁護人「(起訴事実を認めれば)『求刑が2〜3年軽くなる』と言ったことは?」

 A検事「言うはずがありません」

 緒方被告の弁護人「実際は言っているのではないですか?」

 「(公判担当ではなく取り調べ担当の)私は求刑を決める立場ではありませんので…」

 《ここで検察側が「異議あり」と挙手し、質問に異議を申し立てた。緒方被告の弁護人は発言を撤回し、7月24日の取り調べ状況に移した》

 緒方被告の弁護人「両手で机をたたいてどなった事実があったのではないですか?」

 A検事「机をたたいたことは1回あります。7月24日ごろです」

 緒方被告の弁護人「どの程度ですか」

 A検事「手のひらで机をたたきました」

 緒方被告の弁護人「何度もですか?」

 A検事「いいえ。1回です」

 緒方被告の弁護人「怒鳴ったのですか?」

 A検事「『何をいいかげんなことを。正直に話してください』と言いました。緒方被告は『(自白ではなくて)自認調書ならよい』と取引のようなことを持ちかけてきたんです。私は『(緒方被告が再逮捕された)7月18日(の取り調べ)には話していたではないですか』と言うと、『想像で言った』と悪態をついたので…」

 《A検事は、机をたたくなどした行為を認めたが、緒方被告に原因があったと言いたいようだ。じっとA検事をみつめていた緒方被告は、まゆをしかめた》

 緒方被告の弁護人「(緒方被告は詐欺を)やってると思いこんで調べていませんか?」

 A検事「7月24日の状況では、適当な話を以前にしていたとは思えませんでした」

 緒方被告の弁護人「20〜30分、怒鳴り続けていたのではないですか?」

 A検事「いいえ」

 緒方被告の弁護人「7月31日に緒方被告が認めたというのは本当ですか?」

 A検事「本当です」

 緒方被告の弁護人「あなたが『供述はこうこうだ』と言って、(緒方被告が)渋々うなずいただけではありませんか?」

 A検事「違います」

 緒方被告の弁護人「7月31日に緒方被告は家族を気にしていました。家族のことを思って虚偽自白をしたのだと思いませんか?」

 A検事「逆です。家族を考えて、口では認めていたのに、調書では認めないと転じたのです」

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