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2008年12月03日(水) 22時26分

<道路財源>自民党ペースで議論 「予定調和」の決着に毎日新聞

 09年度からの道路特定財源の一般財源化問題は、麻生太郎首相の方針の揺れを見透かすかのように、終始、自民党ペースで議論が進んだ。地方配分の1兆円は、道路整備と関連事業に使途を事実上限定する新交付金で決着したが、地方交付税の増額を別途認めることで首相にも“花”を持たせた。小泉内閣の道路公団民営化当時のような政府・自民党の全面対決は影を潜め、予定調和的な着地で、改革の成果はかすんだ。

 「新交付金は使途を限っている。何のための一般財源化か」「これでは公共事業特定財源だ」。自民党本部で3日開かれたプロジェクトチーム(PT)総会で中堅・若手議員は報告書骨子案を批判した。一般財源化の本旨を突いた指摘だが、賛同は広がらなかった。

 PTメンバーのある道路族幹部は、早くから「こっちが弁当を作って出せば、首相は食べるだろう」とうそぶいていた。定額給付金問題や失言で求心力が弱まる一方の首相に、党側の要求を覆すだけの力はないと踏んでいた。PTには、地方の道路整備を重視する細田博之幹事長、古賀誠選対委員長ら党幹部が毎回のように出席し、にらみをきかせた。中堅議員は「道路族主導は初めから分かっていた」と指摘する。

 自民党が暫定税率の当面維持を打ち出したのに対し、公明党は自動車重量税と自動車取得税の税率引き下げを譲らない。自民党は低公害車購入に伴い税負担を軽減する「自動車グリーン税制」の拡充を妥協の呼び水にしたい考えだが、「グリーン税制はあくまでも環境対策。現在の保有者の負担は軽減されない」とする公明党とは、なお隔たりがある。

 両党は今後、与党税制協議会で調整を本格化するが、首相は最後まで存在感を発揮できない可能性もある。【犬飼直幸、仙石恭】

 ◇中身「骨抜き」の批判も

 道路特定財源の一般財源化の枠組みが固まったが、ガソリン税などの暫定税率が当面維持されることなどから、一般財源化と言うには中途半端なものになった。道路関係予算の総額や内訳もこれまでと大きくは変わらない見込みで、「骨抜き」との批判も出そうだ。

 自民党のプロジェクトチーム(PT、座長・谷垣禎一元国土交通相)の案では、地方への1兆円は道路整備を中心にするほか、道路に関連するインフラ整備やソフト事業に充てるとしている。廃止される地方道路整備臨時交付金(約7000億円)に代わる位置づけで、7〜8割が道路整備費に回るとみられる。

 08年度の国の道路特定財源は約3・3兆円。地方道路整備臨時交付金のほかに、国の道路直轄事業と地方への補助金(計約2兆円)や、高速道路料金引き下げなどの道路・自動車関連費用(計約6000億円)に充てられた。これらの事業費は09年度予算でも要求されており、通常の予算編成作業の中で査定されるため、極端な削減はないとみられる。

 地方への1兆円の使い道が道路関連に限られるのは、揮発油(ガソリン)税の暫定税率が維持されるためだ。本来なら、一般財源化に合わせて消費税率引き上げや環境税創設など税制抜本改革が議論され、暫定税率も見直されるはずだったが、政府・与党は議論を先送りした。このため、高い暫定税率を自動車ユーザーに説明するには、税収を引き続き道路関連に使わざるを得なくなった。国交省幹部は「暫定税率維持と一般財源化は矛盾する。PT案は苦心の作だ」と話す。【位川一郎】

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