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2008年12月03日(水) 16時01分

共産党、選挙区絞り込み方針見直さず産経新聞

 共産党は30日、自民党が提出を検討している国政選挙での供託金引き下げを柱とした公職選挙法改正案が次期衆院選前に成立した場合でも、供託金の没収を回避するために昨年末に打ち出した選挙区の候補者を絞り込む基準は見直さない方針を固めた。複数の共産党関係者が明らかにした。自民党が公選法改正に動く背景には、共産党の「空白区」を減らすことで共産支持票が民主党に流れるのを阻止する思惑がある。しかし、共産党は自民党の供託金引き下げ案では候補者擁立基準を再考するに至らないと判断した。

 自民党選挙制度調査会(村田吉隆会長)は11月21日、(1)国政選挙の供託金を衆院選挙区と参院選挙区で300万円から200万円に、比例代表でいずれも600万円から400万円に引き下げる(2)衆院選挙区の供託金の「没収点」を有効投票総数の10分の1から20分の1に引き下げる−ことを柱とした公選法改正案をまとめ、議員立法で早期成立を目指す方針を決めた。公明党のほか、供託金引き下げをマニフェスト(政権公約)に盛り込んでいる社民党など野党も自民党の動きに同調する見通し。

 供託金引き下げの目的について自民党は表向き「多数の意見を政治に反映させる」と強調しているが、党幹部は「次期衆院選に向け民主、共産両党の分断を図るのが狙いだ」と明かしている。

 共産党は平成17年の前回衆院選の選挙区で6億6900万円の供託金が没収されるなど党財政は厳しい状況にある。このため同党は昨年末、供託金没収の負担軽減などを理由に次期衆院選の選挙区で大幅に候補者を絞り込む新基準を決めた。これまでに決まった立候補予定者数は150人足らずで、前回(275人)から半分近く絞り込んだ。

 自民党には、供託金没収のハードルを下げることで共産党が選挙区により多くの候補者を擁立できる環境を整え、「反自公」色の濃い共産支持票が民主党に流れるケースを減らす思惑がある。民主、共産両党の「共倒れ選挙区」をもっと増やそうというわけだ。

 自民党の公選法改正の動きに対し、民主党は「極めて党利党略の発想を内包しており、応じるわけにはいかない」(鳩山由紀夫幹事長)と批判を強めている。

 一方、共産党の志位和夫委員長は11月27日の記者会見で「供託金が高すぎることは制度発足当初から日本の民主主義にとっての大問題だとして根本的是正を強く求めてきた」と述べ、歓迎する考えを示したが、同党の次期衆院選での候補擁立問題への影響に関しては言及を避けた。

 しかし共産党は公選法改正案の成否にかかわらず、昨年末に決めた候補者絞り込みの基準は見直さない方針で、同党関係者は「供託金が100万円引き下げられた程度で候補者を増やすことはない。自民党の考えは甘い」としている。共産党の財政事情はそれだけ厳しいということで、自民党の仕掛けた「民共分断」工作は不発に終わりそうだ。

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