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2008年12月03日(水) 02時18分

自民「歳出増の大合唱」 衆院選を意識、首相に路線転換仕掛ける産経新聞

 「バラマキでもモチまきでも豆まきでも1年は(財政支出を)まいて、経済が生き残らなければならない。改革派であろうがなかろうが、これが正しい」

 2日午前、平成21年度予算案をめぐる自民党政務調査会全体会議を終えた後、“小泉チルドレン”で構造改革派とみられてきた片山さつき衆院議員は記者団にこう強調した。

 来年度予算編成で、自民党執行部が同日、歳出削減路線の概算要求基準(シーリング)の見直しを麻生太郎首相に求めたのは「財政規律を維持しても衆院選には勝てない。議員の命がかかっている」(尾身幸次元財務相)という「先祖返り」の声が党内に満ちている表れだ。

 首相は執行部の要求を退けた形をとったが、政府が同日、社会保障費の自然増の抑制分にたばこ税を充てる方針を決めたのも、党との折り合いをつける姿だ。

 最初に歳出増の声をあげたのは首相の女房役、細田博之幹事長だった。

 「歳出をより景気振興型に変える必要がある。景気、雇用が一番大事だという方向に持っていかねば」

 細田氏は同日朝の記者会見でこう言い切った。

 続いて総務会では、笹川堯総務会長が「景気回復以外に国民が幸せになる方法はない」と口火を切った。すると歳出増の意見が続出し、細田氏は「骨太の財政健全化路線は3年間停止して(首相に)景気刺激策にかじを切れと言わねばならない」と引き取った。

 歳出増を求める議員には、金融危機で「景気刺激策が世界中で合意された」(細田氏)今が、路線転換のチャンスと映った。

 敏感に反応したのは、構造改革を支持する議員たちだった。「小泉さんが総選挙で得た議席で小泉改革を否定するのか」。若手の一部から反発が出た。財政規律派の党幹部は「骨太は絶対外しちゃいけない。赤字国債を出せば、消費税10%じゃすまなくなる。予算を付けろというのは族議員ばかりだ。歯を食いしばらなくちゃ国民の理解は得られない」と声を荒らげた。

 方針転換があれば「来年度予算案の年内編成は困難。1月初旬召集の通常国会冒頭に提出できなければ、麻生内閣は大打撃」(自民党幹部)になりかねない。見透かした財務省幹部は「あれは陳情でしょ」と冷ややかに語った。

 構造改革路線の否定は、自民党の改革イメージを後退させるリスクがある。事実、民主党の山岡賢次国対委員長は同日、「(歳出削減路線は)小泉政権の骨格だ。解散し国民に信を問うてからでなければ国民に対する重大な公約違反だ」とさっそく批判した。

 自民党幹部は2日夜、概算要求基準(シーリング)とは別枠の3300億円の重点枠や平成20年度第2次補正予算で景気対策を行う考えを示した。建設国債発行による公共事業圧力は強まり、首相の「シーリング維持」の言葉と裏腹に、事実上の路線転換が進みつつある。(加納宏幸)

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