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2008年12月03日(水) 17時49分

老舗発信「和のXマス」 文房具・和紙工芸の鳩居堂産経新聞

 きらびやかなイルミネーションが夜の街角を彩る季節だ。クリスマスに向け、ますますにぎわいをみせているが、そんな華やいだ雰囲気を和のテイストで巧みに演出する老舗もある。江戸時代から続く文房具・和紙工芸の「鳩居堂」−。銀座のメーンストリート、中央通りに面する鳩居堂銀座店は、店の前の路線価が20年以上も日本一だということでも知られる名店だ。(飯村文紀)

 店内には飾られているクリスマス関連の商品。“鳩居堂のクリスマス”は派手ではない。もちろん建物に電飾などを施すこともなく、せいぜい店内にクリスマスものの飾り物やオルゴールなどの置物、シルクスクリーン印刷という技法を使ったはがき(通称「シルク刷り」)などを陳列する程度だ。あくまでも控えめにクリスマス商戦に参加する。

 店内に3万種類以上の商品を陳列する鳩居堂で、クリスマス商品は目立つ存在でもない。花などの日本画をあしらうことが多いシルク刷りの図柄は約70種類あるが、クリスマス関連のシルク刷りは、サンタの絵柄やシクラメン、ポインセチア柄のものなど数種類だけ。どちらかといえば、年賀はがきの中に埋もれている印象すらある。

 実際、鳩居堂は「日本の伝統文化を守り育てる」ことを使命としてきた。だからクリスマスという洋風イベントには冷ややかなのかと考えていると、決してそうではなかった。むしろクリスマスを年の瀬の風物詩としてアレンジした「和のクリスマス」を提案しているようだ。

 例えば鳩居堂オリジナルのクリスマスグッズとして唯一、販売している2種類のポチ袋。和紙でできた袋にかわいらしいサンタが笑う簡素な作りで、4、5年前から出している。

 正月用のポチ袋が並ぶ中、顧客から「クリスマス用の商品はないのか」との問い合わせを受けたことが、発売のきっかけの一つとなったという。

 シルク刷りはがきの中にクリスマス用の絵柄を加えたのはもっと古く、30年前の昭和53年から扱っている。店長の小西達雄さん(60)は「カードのもらい手に気持ちが伝わるよう、『歳時記』をもっと大事にしようと話し合いました」と、当時を振り返った。

 歳時記とは、折々に行われる行事などの季節感のこと。そんな発想でクリスマス用の図柄も取り入れた。季節感に和風と洋風の区別はないからで、「お客さまに、好みのものを見つけたときの喜びを感じてもらえれば」と小西さん。

 鳩居堂が提案する「和のクリスマス」には、老舗がそろう銀座ならではの輝きがあるのかもしれない。

 ■鳩居堂 平安末期から鎌倉初期の武将、熊谷直実(なおざね)(1141〜1207年)の子孫、熊谷直心(じきしん)が寛文3(1663)年、京都寺町の本能寺門前に薬種商「鳩居堂」を始めたことに由来する。屋号は儒学者の室鳩巣(1658〜1734年)が命名。銀座店のほか、渋谷、新宿、横浜、池袋、丸の内の計6店舗で営業している。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081203-00000578-san-l13