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2008年12月02日(火) 19時48分

未成年の新隊員をボコボコに/自衛隊が温存する旧陸軍の“伝統”を告発MyNewsJapan

 陸上自衛隊駒門駐屯地(静岡県御殿場市)で昨年10月、未成年の新隊員が上官からリンチを受け、歯を折るなど負傷する暴行事件が起きた。「いまだにこんなことがあるなんて、信じられない」。
 あこがれて入隊した自衛隊で受けた理不尽な仕打ちに、被害者は不信感を募らせる。暴力事件で懲戒処分を受けた自衛隊員は、昨年度1年間で80人以上。そのほとんどが闇に包まれたままだ。

 「正座させられて、足で蹴られました。よろけたところを拳で顔を殴られた。ガーンと。意識が薄らいで…」

 そう話すのは、元陸自2士のAさん(19歳)だ。

 部隊配属になったばかりの昨年10月、営内班という宿舎で、上官から殴る、蹴るの暴行を受ける。顔面から出血し、奥歯2本を折る大ケガをした。

 入隊前から旧日本軍の暴力体質については知っていた。だがそれは過去の話。自衛隊は違う——そう信じていたという。

 教育隊では暴力の類はいっさいなかった。教官は優しく、厳しい、人間味のある人物だった。

 半年間の教育を経て配属された先は、駒門駐屯地のT中隊某小隊。駐屯地内で生活しながら、車を塗装する作業の手伝いなど雑用に追われる毎日がはじまった。厳しかったが充実感があった。

 だが、部隊配属になって間もない昨年10月31日の夜、事件は起きた。

 午後5時に仕事を終え、夕飯を済ませてから風呂に行き、雑用をこなしてから午後7時半ごろ、営内班の自室に戻った。

 部屋は4人部屋で、同僚のB2士、上官の士長2人と相部屋だ。部屋にはB2士とAさんと先輩士長の3人が残っていた。B2士も未成年だ。それぞれ自分のベッドで本を読むなどしていた。つかの間の安らぎの時間だった。

 上官2人が現われたのは午後10時。W士長とI1士だ。酒を飲んでいるらしく赤い顔をしていた。

 「正座しろ!」

 I1士が部屋の中央付近を指差して怒鳴った。

 「何のことか理解できませんでしたが、とにかく従ったんです」

  AさんとB2士は並んで床に正座した。

 「お前ら、態度が悪い」

 「はい。すみません」

 わけがわからずに謝った。

 「声が小さい!」

 頭上から罵声が浴びせられた。

 「お前ら、4人いる“一個上の先輩”の名前わかるか」

 Wが尋ねた。B2士が先輩2人の名前を言った。Aさんは、同じ名前を繰り返したが、あと2人が思い出せない。

 「あと2人の名は?」

 I1士が語気を強めて迫る。意を決したようにB2士が尋ねた。

 「一個上の先輩とは、年ですか、それとも階級ですか」

 「質問を質問で返すんじゃねえよ!」

 I1士は怒号とともに、正座しているB2士の左肩付近を足で蹴った。Bさんは倒れかけ、床に手をついた。そして焦りながらまた言った。

 「いや、一個上とは年か階級かわからないのですが…」

 「そんなの関係ねえよ!」

 W士長が立ち上がり、B2士を蹴り倒した。床に横倒しになったB2士の腹を、W士長は何度も蹴飛ばした。さらにTシャツの襟をつかんで床を引きずり、首を絞め始めた。

 「ごめんなさい、ごめんなさい」

 もがきながら謝るB2士の口元に血がにじんだ。

 これから何が起きるんだ——Aさんは戦慄した。

 Iが怒鳴りながらAさんに向かってきた。肩を蹴られた。よろけて手をつく。姿勢を立て直そうとした次の瞬間、激しい衝撃を右目の眉付近に感じた。意識がもうろうとした。

 「あーあ。血いまで出しやがって」

 W士長が言うのが聞こえた。以後、Aさんは自分の身に何が起きたのかよく覚えていない。

 B2士の目撃によれば、顔付近を繰り返し蹴られていたという。その際に、奥歯が折れたらしい。

 折れた奥歯は治療できず、抜くことになった。インプラント治療で歯を取り戻したいが、そのためには費用がかかる。裁判をやって費用を弁償させたいが、時間がかかる。ノウハウもわからない。どうするべきか。
 
 Aさんは悩んだ末に、被害届けを取り下げ、示談に応じる決心をする。Aさんが訴える。

 「オンブズマンのような第三者機関が自衛隊を監視する仕組みをつくらなきゃいけないと思う。暴力働いている自衛官の給料を払っているんだから、そのくらいできるはずです」

(三宅勝久)


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