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2008年12月02日(火) 22時21分

トヨタショックの余波 モノづくりの灯を消すな産経新聞

 トヨタショックがいまだに収まらない。世界的な景気減速を受け、トヨタ自動車が11月上旬に発表した2009年3月期連結決算の営業利益のことだ。1兆6000億円の当初見通しから約7割減の6000億円という大幅な下方修正だった。

 これで来年度は地方自治体の法人税収が大幅に減る。減少幅は愛知県で約3000億円、高級車レクサスの工場がある田原市は約75億円と前年より8割も落ち込んでしまう。減産を余儀なくされたトヨタは期間工をはじめとした人減らしを決め、膨大な内部留保を忘れたかのように宣伝広告費など経費の切り詰めを始めた。名古屋市錦のクラブ街では客を待つタクシーの二重駐車が目立っている。

 某金融機関の調査部長は「回復には時間がかかりますよ」と言う。設備投資も個人消費にも動きがない。先行きはV字型ではなく、U字型でもない。ストーンと落ち込んだあと低空飛行が長く続くL字型だそうだ。

 見るもの聞くもの後ろ向きの話ばかりなので、先の週末は気分転換に有松を歩いてきた。名古屋市東南部に位置する旧東海道の茶屋町だ。東から西へゆったりとカーブを描く街道沿いにしっくいを塗り込めた塗籠(ぬりごめ)造、虫かごのように細かい格子の虫籠窓(むしこまど)の町屋が並んでいる。

 有松山車(だし)会館では、毎年10月第1日曜日の天満宮の祭礼に曳(ひ)き出される「からくり山車」を展示していた。高さが6メートルもあるこの車は2代目玉屋庄兵衛が1768年に製作したという。龍や鶴亀の刺繍(ししゅう)幕が下がり、支輪下も宝尽くしの透かし彫り。車上に「唐子」や「布袋」などの人形が載っている。

 備え付けのビデオが唐子が筆に墨を含ませて色紙に字を書いてみせ、布袋がやんやと喝采(かっさい)している様子を映し出す。人形の手足や頭は堅固な糸でつながっていて、木遇(でく)方が下から糸を引いて操るが、動きや表情が生きている人のようだ。骨組みはヒノキや竹などの木材、バネやゼンマイなどの部品はセミクジラのひげだという。微妙な寸法を割り出す数学の知識や、図面通りに材料を組み立てる技術に舌を巻いた。

 こういう江戸時代のからくり山車が愛知や岐阜などにいまも約200台残っている。鎖国に加え大がかりな機械化がご法度だった時代に、人形師たちは脈々と最先端技術「からくり」の技を磨いてきた。開国後の日本が急激な近代化を遂げたのは、彼らの助走があったからではないか。自動車、時計、工作機械など世界に誇れるモノは一朝一夕には造れまい。うまずたゆまず走り続けて初めて生まれたのだ。みんなが亀のように首を縮めて固まっていては次の飛躍は望めず、L字型どころか二番底が現実になってしまう。モノづくりの灯を消してはならない。(早坂礼子)

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