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2008年12月02日(火) 22時25分

【Re:社会部】悲しく、つらく、無念だ産経新聞

 「失われた信頼を取り戻す」。平成8年11月、山口剛彦さんはこう宣言し、厚生事務次官に就任しました。当時、厚生省は激震に揺れていました。前任の岡光序治元次官が社会福祉法人から利益提供を受けていたことが発覚、辞職する事態になっていたからです。

 翌12月には岡光元次官が収賄容疑で警視庁に逮捕され、厚生省の信頼は地に落ちました。それを宣言通り、在任中の3年間で立て直したのが、山口さんでした。

 就任から12年後の11月18日、山口さんはさいたま市の自宅で奥さんとともに刺殺された姿で見つかりました。厚生行政の功労者が、そして奥さんまでもが、「官僚は悪だ」と供述する小泉毅容疑者(46)に殺害されたなら、これほど不条理なことはないでしょう。

 警視庁は「岡光事件」の際、他の厚生官僚にも同様の官業癒着がないか調べたそうです。当然、後任の山口さんも対象になりましたが、当時の捜査幹部は「贈賄側が主催する勉強会に顔を出していた幹部は複数いたが、山口さんには疑われるところが一切なく、清廉潔白だった」と話しています。

 「家が近かったから」。小泉容疑者は山口さん宅を狙った理由をこう供述しました。「悲しく、つらく、無念だ」。岡光元次官の逮捕時に山口さんが語った言葉は、厚生行政に携わる人たちの胸に沈殿していくのでしょう。(宇)

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