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2008年12月01日(月) 16時02分

支局長からの手紙:裁判を国民のものに /和歌山毎日新聞

 来年5月、市民誰もが対象となる「裁判員制度」が始まります。そこで、まずクイズです。
 <A 裁判員は、法律や手続きについて講義を受けるか>
 (1)3日間の講義を受ける(2)ぶっつけ本番(3)90分間の講義
 <B 有罪か無罪かを自分で判断できなかったらどうするか>
 (1)直感で決める(2)裁判官に任せる(3)無罪にする
 <C 裁判官3人、裁判員6人の計9人で意見が分かれたら>
 (1)裁判官が結論を出す(2)多数決で決める(3)全員一致まで議論する
 <D 裁判員は判決に署名したり、氏名を公表されたりするか>
 (1)署名はせず、氏名も公表されない(2)署名はするが、氏名は公表されない(3)氏名は公表され、開廷前にはテレビで放映されることも
 和歌山弁護士会主催の「裁判員裁判を考えるつどい えっ!私が裁判員?」が11月25日に開かれ、約150人が参加。桂枝曾丸さんが、この日のために作った和歌山弁落語「おばちゃんの目〜疑わしきは被告人の利益に」を披露した後、このクイズが行われました。
 恥ずかしながら、私の正答率は半分でした。正解と受け売りの解説をしますと、Aは(2)=裁判では市民の社会常識、市民感覚で判断してもらうので、専門知識の講義はありません▽Bは(3)=検察官が立証に成功した場合のみ有罪とするのが刑事裁判の絶対原則です▽Cは(2)=ただし有罪には裁判官の最低1人が同調する必要があり、裁判員だけでは有罪にできません。
 Dには紙幅を費やしましょう。答えは(1)です。毎日新聞社は10月、和歌山地裁の法廷を会場にして、イベント「裁判員制度を知ろう!」を開催。この際、法曹3者に対する質問の大半が「名前や顔を知られては、有罪にした被告側からの仕返しが怖い」という思いからのものでした。裁判所の返答は「裁判員に仕返しをすれば厳しく罰せられる。そもそも裁判員が特定されることはない」でした。でも「傍聴者に知り合いがいたら、名前が知られてしまう」「裁判官は職業だから警察に守られているだろうが、一般市民はどうなのか」「法廷で顔が隠れるような帽子をかぶってはいけないか」というような質問が相次ぎました。この不安をぬぐうことが、当局には不可欠でしょう。
 クイズの後、パネルディスカッションもありました。2年前の模擬裁判で裁判員を務めたパネリストが「刑事事件に対し、私たちはやじ馬であってはいけない。この制度は、裁判を国民のものにするいい機会になる」と達観していたのが、胸に響きました。「介護に絡む虐待など家族間で起きる事件も多い。主婦ならではの意見を聞きたい」(本紙社会面連載「裁判員元年」の裁判官の言葉)といった社会的な期待もあります。和歌山では裁判員による裁判が年20〜30件予想されます。県内の候補者は2399人、有権者357人に1人の割合で、本人への通知が発送されました。和歌山弁護士会(073・422・4580)などでは、制度に関する講師の無料派遣も行っています。制度を理解し、司法を私たちのものにしましょう。【和歌山支局長・嶋谷泰典】

12月1日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081201-00000227-mailo-l30