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2008年12月01日(月) 20時18分

ブロガー記者 影響力と速さ、本職に肉薄産経新聞

 1億総記者時代の到来!? ネット上にブログを開設するブロガーをマスコミ同様、いやそれ以上に扱う企業が目立ってきた。東京・表参道ヒルズで先月18日夜に行われた「ミシュランガイド東京 2009」出版記念パーティー。テレビクルーや記者に交じりOLやサラリーマンの姿も。彼らは日本ミシュランタイヤが募集した「ブロガー記者」だ。

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 広報部の鈴木琢執行役員は「読者に一番近いブロガーの方に魅力を伝えてもらうのが狙い。高級なイメージを持たれていますが、1000円以下のランチを出す店も掲載するなどお高くとまっているガイドではない。パーティーも含め感じたことをそのまま書いてもらいたい」と期待する。

 ブログ内容やアクセス数をもとに20〜40代の男女10人を選考。「一部メディアに不義理をして」まで呼んだブロガー記者は個性派ぞろいだった。銀行勤務の萩尾美帆さんは「自分の情報が誰かの役に立てば」と、長年在住したスペインの食をテーマにブログを開設し、無料でアドバイスしたり執筆もしている。モデルの酒井りかさんは「貴重な場に参加できてうれしい」と興奮気味。ブロガーたちは自然に2、3人のグループに分かれて取材に突撃していった。

 三つ星シェフの胸に輝く星のバッジに「かわいいですね」と女性ブロガー。対するシェフは「正式なミシュランのコックコートは星が刺繍(ししゅう)。それが通関で足止めされてしまい、実は間に合わせのコートにバッジを着けているの」なんて“特ダネ”も聞き出していた。

 「目の付け所が“本職の記者”とは違うんでしょうね」とは、大手旅行会社に入社4年目の片山琴美さん。翌朝彼女からもらったメールには、「目の前で見たインタビュー風景が放送されたり新聞で記事になっているのを見て、報道の世界はあれだけの素材を小さく的を射てまとめなければならないので大変だなあと思いました」などとあった。しかしブロガーたちも大したもの。彼女を含め多くがその夜のうちにパーティーの模様をアップしていた。

 三つ星の日本料理店「小十」の奥田透店主も「情報の速度でいえばブログが一番速い」とその影響力を認めつつ「大量のブログがあふれ、基準もない世界。どの情報を信頼するか、受け取り側の判断が大切」とも語る。

 日本ミシュランタイヤでは今年7月にも約2500人の応募から5組10人のブロガーをニュージーランドに招待し、スタッドレスタイヤの試乗会を実施するなど本業でも活用した。

 一方、東京・霞が関の「ルースクリスステーキハウス」でもこのほど1周年を記念して、7人のブロガーを同伴者付きで招待。1組約4万円相当のディナーをふるまっている。「おいしかった、楽しめたと納得した場合だけ書いてくださいとお願いしていますが、みなさん非常に熱心に報告してくださっています」と広報。美術展でもブロガー用に内覧会を設ける動きも活発化している。

 1月の総務省調査によると国内のブログは約1690万件で、文字情報量は書籍約2700万冊分に相当するという。マスコミもウカウカしていられない。(重松明子)

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