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2008年12月01日(月) 19時59分

<米紙CSM>日刊紙発行を中止 創刊100年の改革(2) 経営環境も追い打ち毎日新聞

 改革が必要になったもう一つの要因は経営状況だ。同紙は教会系の非営利団体が運営し、利益優先ではないが、「損失ばかりを出しているわけにはいかない」(ウェルス氏)という。

 70年に22万部だった発行部数は現在5万2000部に落ち込み、販売収入も減少。米国の新聞はほとんどが地方紙で、地元住民向けの広告収入で経営が成り立っている中、全国紙である同紙は、読者の居住地域が絞れず、広告主にとってはメリットがない。広告収入の割合は1割程度だ。

 さらに、空輸による配達コストの高騰もあって最近は赤字が続き、今年度は支出約3100万ドル(約30億円)に対し収入は1250万ドル。1850万ドルの赤字を、教会からの約1300万ドルと同紙を運営する非営利団体系の財団からの約600万ドルの各拠出金でまかなっている。

 今回の改革によって、材料、印刷、配達コストを大幅に削減するほか、一部スタッフ(現在は編集部門約100人、その他約30人)を解雇して支出を抑える。一方、インターネットサイトを充実させることでネットの広告収入を上げることも可能だという。

 さらに、週刊紙の購読料は年間89ドルで日刊紙の同219ドルより安くなり、販売部数が伸びることも期待している。今後3〜4年で赤字額を1000万ドル程度に圧縮、その後、数年かけてゼロにするのが目標だ。

 一方、高齢読者からの支持を失うことのほか、記者が新しいニーズに対応できるかといった問題もある。ネットニュースでは速報性とニュースの随時更新が求められるが、紙媒体に慣れた記者には大きな意識改革が必要だ。動画撮影など新しい技術を習得する必要もあり、半年をかけ記者訓練を行う。

 ウェルス氏は「紙でニュースを提供する形は、産業モデルとしては破綻(はたん)した。今回の決定は、今後さらに100年、生き抜くための発展的改革であり、米国の他紙が数年以内に同じような挑戦に乗り出すのは間違いない」と話している。

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■記事の続き(3止) 記者解雇相次ぐ米新聞業界 NYTも
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朝日新聞社:初の赤字転落−−08年9月中間連結決算

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081201-00000020-maiall-sci