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2008年11月03日(月) 02時30分

<民法改正>債権の時効、3年か5年に統一 1世紀ぶり着手毎日新聞

 法務省は、民法が定める債権の消滅時効を統一化する改正作業に着手した。原則の10年を引き下げる一方で、短期消滅時効(1〜5年)も廃止し、5年か3年に統一する方向で検討を進めている。消滅時効の統一化により、債権者、債務者双方の債権管理の労力削減を図るのが最大の狙いで、法学会も同様の方向で提言している。早ければ10年度の改正を目指しており、民法の債権分野は1世紀ぶりの大改正となる。

 現在の民法は債権について「10年間行使しないときは消滅する」との原則を定めている。同時に、債権額が大きくないと想定されるケースについて、事例を挙げて5、3、2、1年の短期消滅時効も設定。▽医師の診療報酬や工事請負代金の請求権は3年▽一般商店の販売代金や理髪店の散髪料は2年▽旅館、料理店、飲食店の宿泊料や飲食料は1年−−などとなっている。

 原則10年の消滅時効については、「支払い証明書を長期間保管しなければならず、債務者の負担が重い」として、期間の引き下げで債務者を守るべきたとの指摘があった。一方で、短期消滅時効についても、業者側から「請求期間が短すぎる」との意見が出ていた。こうした消滅時効の差が債権者、債務者双方に分かりづらいため、法務省や学会が消滅時効統一化に向けて検討を進めてきた。

 民法は1898年施行。04年にカタカナ語からひらがなの口語体に現代語化されたが、財産に関係する分野は制定当初から変わっていない。法務省は学会の提言も踏まえ、法相の諮問機関・法制審議会に諮り、意見がまとまれば、時効を含めた債権分野の大がかりな法改正に踏み切る方針だ。【石川淳一】

 【ことば】▽債権の消滅時効▽ 債権とは、金銭を貸した側(債権者)が借りた側(債務者)に返済を求めるなど、一定の行為を特定の相手に請求できる権利。時間がたつほど証明が困難になることなどから、一定期間行使しないと請求の権利が失われる。債権の請求権は原則として、権利行使が可能になった時を起算点に10年で消滅するが、取引の慣例上、短期間で決済される債権には個別に短期消滅時効を示している。時効進行中に債務者が一部弁済したり、債権者が裁判を起こすなどすれば、時効は中断する。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081103-00000007-mai-soci