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2008年10月29日(水) 21時18分

<裁判員制度>通訳使い模擬裁判 「アドリブ難しい」の声も毎日新聞

 通訳を介した審理が裁判員にどんな影響を与えるか検証しようと東京地裁は28、29の両日、外国人を被告とした模擬裁判を実施した。来年5月に始まる裁判員制度では、通訳の的確さが裁判員の判断を左右しかねないと指摘されているが、参加した通訳からは「アドリブが難しい」との声も上がった。

 架空の強制わいせつ致傷事件を題材に、6グループに分かれて中国語、韓国・朝鮮語、ペルシャ語で行われた。被告人質問や証人尋問では、通訳人はメモしながら順次通訳し、冒頭陳述や論告、最終弁論は、検察、弁護側が事前に用意したメモを基に同時通訳した。

 裁判員役で参加した会社経営、佐藤弘幸さん(36)は「評議への影響はなかった」と話したが、中国語の通訳歴18年の相澤茜さんは「検察や弁護側のアドリブについていくのは難しい。裁判員の質問を正確に伝えるのも課題」と話した。

 最高裁によると、法廷通訳人は4月現在、延べ3982人(計56言語)。07年に1審判決を受け、通訳がついた外国人被告は5670人で、うち裁判員制度対象事件は191人(計20言語)だった。

 最高裁は「争点を絞り、市民に分かりやすい裁判員裁判では、通訳もしやすくなる」と強調する。しかし、英語の法廷通訳歴25年で、公的通訳の学会理事を務める神戸女学院大学の長尾ひろみ教授は「質問の意図を理解し、裁判員に被告の言いたいことを正確に伝えるには、相当の技術と経験が必要」と指摘し、通訳人の資格認定制度導入を提案している。【北村和巳】

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