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2008年10月02日(木) 17時03分

アップル、iPhoneのNDAから“箝口令”を撤回——開発者からの猛烈な非難に降参Computerworld.jp

 米国Appleは10月1日、同社のスマートフォン「iPhone」に対応したアプリケーションの開発者からの批判を受け、リリース済みのアプリケーションについては守秘義務契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)を撤回すると発表した。現在、同社のiPhone開発者向けサイトには、「今回の決定はソフトウェアの完成後も長期にわたって開発者を口封じし続けているという非難の声に応えるものだ」とのメッセージが掲載されている。

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 先週、Appleが開発者に対し、NDAは両者間のすべてのやり取りに適用されると伝えたことが表面化して以来、Appleを公然と非難する声が噴出していた。両者のやり取りには、サードパーティが開発したiPhoneアプリケーションにとって唯一の正規流通経路であるApp Storeに販売を拒否された場合に送られる販売拒否通知も含まれる。

 「リリース済みのiPhoneソフトウェアについてはNDAを取り下げることにした。NDAを作成したのは、iPhoneのOSにはAppleの発明や革新技術が数多く採用されており、第三者に盗用されないよう保護する必要があったからだ。実際、そういうケースは過去にもあった」(AppleのiPhone開発者向けサイトより)

 だが、同社はソフトウェアの完成後も長い間守秘義務を押し付けてきたことで、最近では厳しい目にさらされていたという。「NDAはiPhoneのさらなる発展に貢献したい開発者やオーサーに過大な負担をかけていたため、リリース済みのソフトウェアについては撤回することにした。この問題について建設的な意見をお寄せいただいた方々には感謝したい」(同サイトより)

 とはいえ、だれでも自由に口外できるようになったわけではない。Appleは開発者に、「リリース前のソフトウェアと機能」については引き続きNDAが適用されると念を押している。また、Appleはこの緩和した新ルールを、App Storeに提出して拒否されたiPhoneアプリケーションにも適用するのかどうかも明らかにしていない。1日朝、この点について同社に問い合わせたものの、明確な回答はいただけなかった。

 これは、App Storeでの販売を拒否されたが、その理由についてどこまで公にしていいものかわからずにいる開発者にとっては重要なポイントだと思われる。
 例えば1週間前には、iPhoneの開発者、アレックス・ソキリンスキー(Alex Sokirynsky)氏が、自身の「Podcaster」アプリケーションが販売拒否された挙げ句、開発者アカウントを閉鎖されたとして、ブログにAppleを強烈に非難するコメントを投稿した。ソキリンスキー氏は、「App Storeで販売拒否されたため、開発者向けの流通チャネルであるAd Hocを使ってPodcasterを販売しようとしたが、Appleはそこからも閉め出すという“卑怯な逃げ方”をした」と断罪した(ただしソキリンスキー氏は、その後に非難のコメントを取り下げている)。

 一部には、ソキリンスキー氏がこの投稿を書いたのはNDAのせいではないかと指摘する声がある。Podcasterが販売拒否されて以来、ソキリンスキー氏はiPhoneのちょっとした有名人になった。AppleがApp Storeへの同氏のアクセスを拒否した際、ソキリンスキー氏はApple側の理由を公開した。「Podcasterはポッドキャストの普及に貢献するものであり、iTunesのPodcast部分と機能的に重複する」というのがその理由だ。

 こうした理由に対し、Appleを非難する開発者は他にもいる。例えば、フレーザー・スピアーズ(Fraser Speirs)氏はiPhone(の開発コミュニティに対するAppleのスタンス)にうんざりしており、Appleに対して明確な受け入れ基準を公表することと、App Store申請プロセスに事前承認手続きを付け加えることを求めた。

 だが、10月1日にAppleがNDAを取り下げたことを受け、スピアーズ氏をはじめとする開発者らは同社に拍手を送っている。「これでこそ私の愛するAppleだ。次のステップは、アプリケーションのコンセプトを事前承認することだ。そうなれば未来は明るい」とスピアーズ氏はTwitterにメッセージを寄せた。

 Appleは1日、開発者に1週間ほどで改訂版のNDAを送付できると語った。

(Gregg Keizer/Computerworld米国版)

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