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2008年09月16日(火) 17時10分

パラ五輪走り幅跳び 実業団所属の山本篤が銀産経新聞

 【北京=川越一】北京パラリンピックの陸上男子走り幅跳び(切断などF42/44)で16日、大体大出身の山本篤選手(26)=静岡=が5メートル84を跳び、銀メダルを獲得した。障害を抱えながら実業団のスズキ陸上部に所属する義足のアスリートは、障害者へのさらなる門戸開放を訴えた。
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 1回目、2回目と踏みきりが合わない。3回目で8位以内に入らなければ、4回目以降を飛ぶことができない。「ちょっと自分の心の中で緊張していた。2本目がファウルになってちょっとやばいかなと思った。一足長くらい下げて安全にと思って臨んだら、たまたまきれいに浮けた。来たっって思った」と山本選手。5メートル84をマークし、記録なしで敗退するピンチから一気に2位に浮上した。
 4回目以降、記録を伸ばせず、自己ベストの5メートル90を更新することはできなかったが、3回目の跳躍がライバル選手にプレッシャーをかけていた。焦りがみえる他の選手は、4回目以降、ファウルを連発。運も味方し、4年間の苦しいトレーニングが報われた。
 14日の男子百メートルでは5位入賞とはいえ、フライングの失格者を除けば事実上の最下位だった。「百は百、幅は幅。幅跳びで自分の最高のパフォーマンスを出していこうと思っていた」。惨敗の原因を「心の弱さ」と話した山本選手だが、“開拓者”として、このまま終わるわけにはいかなかった。
 静岡・掛川西高2年だった17歳の時、バイク事故で左足をひざ上から切断した。だが、専門学校に進んで陸上を始め、大体大で競技を続けた。知人の紹介もあり、五輪選手を輩出しているスズキが「陸上選手」として採用してくれた。
 「なかなか障害者が実業団の中に入っていけてない状態。僕がきっかけとなって、どんどん名前を出していくことで、実業団の方もメリットがあれば、(他の障害者も)入れる。もっともっと実業団にも門を開いてほしいと思う」。実業団選手としての責任を果たし、障害者アスリートの可能性をつないだ。

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