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2008年08月31日(日) 22時45分

冤罪か有罪か…女子高生2人が痴漢被害訴え 大阪地裁で1日判決産経新聞

 痴漢行為で起訴された被告が無実を訴える「痴漢冤罪(えんざい)裁判」が注目を集めている。客観的な物証がなくても、被害者の証言や状況証拠によって有罪となるケースは多いが、近年は痴漢の誤認逮捕や無罪判決が相次ぎ、痴漢冤罪を扱った著書や映画もヒット。刑事裁判のあり方が問われる中、女子高校生2人への痴漢を疑われ、無実を訴えている男性に1日、大阪地裁で判決が言い渡される。

 ■物証はなし

 大阪府迷惑防止条例違反の罪に問われているのは、兵庫県内の男性会社員(31)。通勤中の昨年5月28日朝、JR大阪環状線の車内で女子高生Aの胸をひじで触り、女子高生Bの下半身を手で触ったとして、起訴された。

 女子高生2人の証言で当時の状況を再現すると−。

 Aは満員電車の中で、背を向けて前に立つ男性のひじが胸に当たるのを感じた。次第に押しつける力が強くなり、違和感を覚えた。その後、停車した駅でBが乗車してくると、男性が突然、1メートルほど移動してBの背後に立つのを見た。

 Bは後ろを振り返ることができない状況の中、尻や太ももを手で触られたと感じ、犯人の腕をつかんだが振りほどかれた。駅に着いてドアが開き、体を動かすことができた瞬間に振り向いたとき、正面にいた男性を犯人と確信。「この人痴漢です」とホームにいた駅員に突き出した。

 しかし、男性は逮捕直後から「やっていない」と無実を主張。第三者の目撃はなく、男性の手にスカートの繊維片が付着しているかどうか微物鑑定も行われたが、検出されなかった。

 ■一致する被害証言

 検察側が立証の柱に据えるのは、互いに面識がない女子高生2人の証言だ。

 Aは男性がBの下半身を触る場面は確認していない。ただ、不快そうな表情で後ろを振り返ろうとするBを見て男性に痴漢されていると思い、自分も胸を触られていたと確信した。早く登校しなければならなかっため被害申告はしなかったが、数日後に車内放送で痴漢の目撃者を捜しているのを聞いて申告したという。

 Bも犯人の顔を確認しようと振り返ろうとしたと証言。顔は見えなかったが、わずかに見えた腕の部分は男性の服装と同じ紺色系のスーツだった。当時周囲に同じ色のスーツを着た人はいなかったという。

 検察側は2人の証言が基本的な部分で一致し、自然な流れに沿って具体的なことや虚偽の申告をする動機がないことを重視。男性に懲役6月を求刑した。

 ■再現実験も

 「警察に無実を訴えても聞き入れてもらえず、つらかった。何度も『やりました』とうそをついてでも家に帰りたいと思った」

 逮捕から約2週間、身柄を拘束された男性は当時の心境をこう振り返る。

 背後のAにひじが当たった認識はなく、Bの方へ移動した理由は「自分の肩にあごを乗せてぶつぶつ言っていた専門学校生風の男から離れようと思い、移動した」。その後、自分の前にBがいた記憶はあるが、「(Bは)後ろを振り返っていない」と話す。

 混雑した車内では、女性に偶然触れた程度で痴漢の誤解を受ける例は少なくない。最近は誤認逮捕や、被害者証言の信用性を否定した無罪判決も目立つ。

 弁護側は「(Bの申告は)遅刻の理由作りだった」と指摘。男性は痴漢冤罪を扱った著書を読み、友人らの協力で同時刻の電車内で再現実験も実施した。当時は満員で密着度が強く、犯人は特定できない−と結論づけたビデオを証拠として公判に提出している。

 ただ、今回は被害者が1人ではない。同じ車両に偶然乗り合わせた女子高生2人が同じ男性からの痴漢被害を訴えている。大阪地裁がどのような判断を下すのか注目される。

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