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2008年08月31日(日) 01時40分

<不法投棄産廃>未処理74万トン、撤去には140億円も毎日新聞

 最近10年間に不法投棄され、環境に悪影響がある産業廃棄物のうち、処理の見通しがないものが全国で約74万トンに上り、すべて撤去すると約140億円かかることが、環境省の試算で分かった。ほとんどは都道府県が処理せざるを得ないが、廃棄物処理法に基づき処理費用の75%を補助する基金(原状回復基金)の残額は13億円しかなく、撤去費用のあてがない現状が浮かんだ。

 基金の補助対象となる98年6月以降の不法投棄について、都道府県からの報告を同省がまとめた。自治体や産業界の関係者らでつくる同省の懇談会で今年7月、具体的な地名は挙げず、件数と量のみを公表した。

 都道府県が、地下水汚染の恐れなど環境に支障があると判断した不法投棄産廃は、06年度末で全国158件、計約137.2万トンあった。

 このうち、処理の見通しがあるのは24件(約63.2万トン)。これらのケースは、既に都道府県が、不法投棄した業者に対し、法に基づく処理命令(措置命令)を出すなどしており、業者が従わなければ行政代執行する方針だ。

 しかし、残る134件(約74万トン)には措置命令が出ておらず、実質的に処理の見通しがなかった。同省は、産廃の全量撤去にかかる費用を1トンあたり1万9000円と見積もり、約74万トンの撤去に約140億円かかると試算した。

 約74万トンのうち約66万トン分は、業者へ行政指導などがされており、環境省は「業者が撤去することもあり、すべてが基金の補助対象になるわけではない」と話す。しかし、懇談会委員の鎌田啓一・青森県理事は「行政指導で撤去させるのは難しい」と、事実上、処理できない事態であることを認めている。

 原状回復基金は、産廃を出す産業界に処理費用を一部負担させる目的で98年度に設置。06年までに39億円が集められ、計26億円を支出して67件の処理を支援した。06年度は国が1億7000万円、建設業界や産廃処理業界などが計1億9500万円を拠出した。

 産廃問題に詳しい梶山正三弁護士(横浜弁護士会)は「大規模な不法投棄は処理に何百億円もかかる。基金の残高は2けた少ない。産業界から必要な費用を強制徴収し、十分な額を確保すべきだ」と指摘している。【日野行介】

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