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2008年08月30日(土) 08時01分

総合経済対策発表 定額減税、効果「?」 赤字国債、残る増発懸念産経新聞

 政府が29日に発表した総合経済対策は、公共事業を積み増す従来の経済対策と一線を画した。公明党の主張で定額減税の実施が盛り込まれたが、景気後退に歯止めをかけるには力不足との見方が多く、その効果は不透明だ。一方、補正予算に関しては赤字国債を追加発行しないことを決め、財政再建路線は堅持した。ただ、減税の規模によっては2度目の補正予算編成による赤字国債の追加発行が避けられなくなる可能性がある。(高橋寛次)

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 定額減税は、所得税や個人住民税(地方税)から一定額を差し引くもので、低所得者に恩恵が大きいとされる。平成10年には2回の減税で、一定額以上の所得者が年間5万5000円、扶養家族が2万7500円の減税を受けた。しかし、当時の減税が景気浮揚につながったとはいえない。将来への不安から、家計は減税分を消費ではなく貯蓄にまわす傾向が強いからだ。

 今回はまだ減税規模は決まっていないが、ニッセイ基礎研究所の櫨(はじ)浩一経済調査部長は「公共事業よりはましで、一時的な効果はある」とみる。ただ、「一度やると、需要減につながるためやめられなくなる」とも指摘、その効果は限定的であるとの見方を崩さない。

 財源も問題となる。伊吹文明財務相は対策決定後、記者団に2度目の補正予算案を来年1月の通常国会に提出する可能性を示唆した。念頭にあるのは定額減税の財源だ。10年の2回にわたる減税では、総額4兆円を必要とした。今回の減税規模は年末までの税制改正論議で検討するが、公明党幹部は「10年の減税を参考にする」と強調しており、2兆円前後の財源が必要となる可能性が大きい。

 与謝野馨経済財政担当相はこの日、補正予算の財源1兆8000億円について、特別会計の積立金など“埋蔵金”の利用を明確に否定した。予算の予備費や剰余金、ムダの削減などで捻出(ねんしゅつ)するとみられる。だが、2度目の補正予算が組まれれば、赤字国債など財政規律を緩ませる財源の活用が不可避となる。

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 ■ETC割引拡大/小麦値上げ抑制

 「安心実現のための緊急総合対策」と名付けた総合経済対策には、物価対策や雇用、低炭素社会の実現など幅広い施策が盛り込まれたが、特に原油・原材料高への対応に主眼が置かれている。企業や家計には恩恵が及ぶ一方、「予算のばらまき」との批判は免れない。主な施策を紹介する。

 【高速道路料金】

 政府案では、今秋から首都、阪神両高速で導入予定の「距離別料金制度」を延期する方向で調整が進んだ。だが、与党から「利用の少ない地方高速の活性化にも役立てるべきだ」との声が強まり、東、中、西日本の高速道路3社などの利用料金で割引が拡充された。

 結局、ガソリン高に苦しむ運送業者の支援を狙った夜間料金の割引と、観光振興など地域活性化を目的にした休日割引の実施が盛り込まれた。必要な財源は約1000億円に上る。

 ノンストップ料金収受システム(ETC)の利用車を対象に10月から1年間実施。トラックが多く通行する平日夜間について午前0〜4時までの割引率を現行の4割から5割に拡大。午後10時〜午前0時までに新たに3割引きを導入する。レジャー需要が見込める休日(土・日曜日と祝日)は、午前9時〜午後5時も利用料金を5割引きにする。

 【中小企業対策】

 原油・資材価格の高騰に苦しむ中小企業の資金繰り対策費として4000億円を補正予算案に計上する。財務省は当初3000億円の計上としていたが、閣僚折衝の末、さらに1000億円が上積みされた。政府系金融機関への出資の積み増しなどにより、中小企業の融資保証枠を充実させる。新たな貸出金額は約9兆円に上る見込みだ。

 信用保証協会は現在、原油高騰の影響の大きい建築など170業種の企業を対象に民間金融機関からの保証率について優遇制度を実施している。今回の対策費で中小企業金融公庫などによる協会への保証を拡充。対象業種を大幅拡大、保証対象となる融資枠を6兆円まで引き上げる。また、中小公庫などが一時的に経営環境の悪化した企業を対象に実施している低利の貸し出し枠も3兆円まで拡大する。

 【小麦価格】

 政府が製粉会社に売り渡す輸入小麦価格の値上げ幅を10%程度に圧縮する。政府はもともと今年10月に、23%の引き上げを予定していた。だが、物価高で家計への影響に配慮すべきだとの声が与党から強まり、引き上げ幅の圧縮を決めた。

 輸入小麦の値上げは、パンやめん類など幅広い食料品の高騰につながる。家計にはささやかな恩恵と感じられるが、結局は税金で穴埋めすることになるので、国民負担の先送りという批判も出そうだ。

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