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2008年08月29日(金) 21時56分

<小麦>10月に10%値上げ 政府売り渡し価格毎日新聞

 農林水産省は29日、国内の製粉会社に売り渡す輸入小麦(主要5銘柄)の価格を10月に一律10%引き上げ、1トン当たり平均7万6030円にすると正式発表した。国際価格の高騰を反映させたものだが、政府の総合経済対策の一環として上げ幅を圧縮した。しかし、その分は税金で穴埋めされる。政府自体が小手先の対応で価格体系をゆがめているとの批判も招きかねない。

 値上げは昨年4月の1.3%、同10月の10%、今年4月の30%に続き4期連続。今年10月以降の価格は昨年12月〜今年7月の輸入価格が基準になり、計算上は23%の値上げとなるはずだった。今年4月も38%の算定結果を30%に抑えるなど、これまでも端数を調整してきたが、今回は低所得者などへの配慮を求める声が与党から強まり、特例的な措置として半分以下の上げ幅にとどめることになった。しかし、穴埋め額は半年間で200億円程度に上ると試算されており、結局は国民負担になることに変わりはない。

 政府は29日にまとめた総合経済対策の中で、原材料高を前提とした「新価格体系への移行」を打ち出し、今回の小麦値上げについても関連業界に「適正な価格転嫁」を要請した。農水省は「受益者(消費者)負担より納税者負担の方が(食費などの比重が大きい)低所得者に恩恵が大きい」と説明、経済対策としての意義を強調しているが、世界的な穀物価格の高騰が続く中、その現実から国民の目をそらし問題を先送りしただけと言えそうだ。

 一方、シカゴの小麦相場は2月末に最高値を更新したが、その後は下落に転じている。来年4月には政府の売り渡し価格も引き下げられる可能性が出てきたとの見方もあるが、農水省は「新興国の需要増など高騰要因はなくなっておらず、豪州は今年も一部で干ばつの兆候があるなど予断を許さない。当分は高水準が続くのではないか」(食糧貿易課)との見方を示している。【行友弥、工藤昭久】

 ◇製粉大手、値上げ交渉へ

 政府の小麦価格引き上げについて、製粉業界最大手の日清製粉は29日、「小麦粉価格に反映することに得意先の理解を得たい」とのコメントを発表し、業務用小麦粉の値上げを求めて食品メーカーなどとの交渉に入る意向を示した。日本製粉など他の大手も追随すると見られ、パンや即席めんなどの小売価格にも波及する可能性が高い。【工藤昭久】

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