記事登録
2008年08月29日(金) 15時45分

CPI+2%超は物価安定と言えぬ状況、インフレ警戒示し続ける方針 ロイター

 [東京 29日 ロイター] 7月の全国消費者物価指数(除く生鮮食品:以下CPI)が前年比2.4%の上昇と1997年10月以来の高水準になった。
 日銀が中長期にみて物価安定の水準として掲げている上限の2%を超え、今後2─3カ月はこうした状況が続くとの見通しから「現状は物価安定とは言えない状況」と認識している。
 この1カ月間、国際商品市況は原油をはじめとして下落傾向が続いているものの、日銀内では「物価の上振れリスクへの警戒度合いが低下しているとのコンセンサスは全くできていない」(複数の幹部)として、物価上昇に対して日銀が警戒感を怠っていない姿勢を示し続けていく方針だ。
 と言うのも、日銀が景気のさらなる悪化リスクにウエートを置いて利下げに転じる気配を見せたり、0.5%という低金利が将来にわたって継続するとの観測が強まった場合、インフレ予想に火が付く可能性が十分あり、そうした事態はなんとしても避けなければならないと考えているからだ。
 白川方明総裁は25日大阪での会見で「もし二次的な効果が広がっていくという事態になれば、持続的な成長の基盤を損なっていくということになる。いったんそうなれば、経済はスタグフレーション的体質になっていくので、注意してみていく必要がある」として強い警戒感を示している。当面、二次的物価上昇を招くような賃金の上昇は起こりにくい状況であり、そうしたリスクは小さいものの、中央銀行としてそうした芽を事前に摘むことが必要との意識が強い。
 たが、物価上振れリスクについて、日銀内の見方はやや変化がうかがわれる。価格高騰による世界的な需要減退を背景に国際商品市況は下落に転じているものも目立ち、国内需要の弱さも加わって、7月までのような価格転嫁の動きはやや鈍り始めている面もある。
 食品や建設資材、外食産業などでは値上げに需要がついきていない状況も見られる。日銀でも「価格転嫁の動きに潮目の変化が見られる」との声も出始めている。一部値上げを表明している乗用車や家電などについても、需要の弱さから販売量に影響するとの声も市場では出ており、需要の弱さが川下企業にとって、収益圧迫材料になる。
 日銀も原油価格がこのまま110ドル台で推移すれば、CPIが10月以降、上昇幅を低下させる方向に転じる可能性があるとみている。このため10月の展望リポートでは、物価の上振れリスクに関してそのウエートが低下する可能性もある。
 他方、もう少し長いスパンで先行きを展望すれば、新興国を中心に世界的な原材料需要の増加が長期的に続く公算が大きい。この点を前提にすると、物価の上昇はじわじわと続くというのが、日銀の見立てるメーンシナリオのようだ。
 そのシナリオが実現し先行き景気の停滞から脱するめどが付くと、デフレ局面とは異なり、ある程度の物価上昇の下で以前ほどには利上げが困難ではない、との意見も日銀内で聞かれる。物価の安定圏内にいる限り、いつまでも現在の低金利が持続するとの期待がまん延しないよう、物価と景気に対する市場の見方に対応して、日銀も微妙に発言トーンをコントロールする状況が続きそうだ。
 (ロイター日本語ニュース 中川泉記者;編集 田巻 一彦)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080829-00000105-reu-bus_all