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2008年08月29日(金) 00時00分

ネット犯罪統計:出会い系と誹謗中傷が増加読売新聞

 警察庁の統計によると、ネットワークを使った犯罪のうち「出会い系サイト規制法違反」が大幅に増加している。また警察への相談件数ではコミュニティサイトなどでの「名誉毀損、誹謗中傷」に関する相談が増えている。(テクニカルライター・三上洋)

上半期では史上最悪の2,192件

サイバー犯罪の検挙件数の推移。右の2つは上半期だけの統計で、2008年上半期は昨年よりも21.2%増えている(警察庁「平成20年上半期のサイバー犯罪の検挙状況について」)

 全国の警察が摘発した「サイバー犯罪(コンピュータ関連・インターネット関連)」の統計が発表された。それによると今年上半期の検挙件数は2,192件で、前年同期より21.2%増加。これは集計を始めた2000年以降で最悪の数字だ。たとえば2004年の1年間の検挙件数は2,081件だったが、今年は上半期だけでそれを超えている。猛烈なペースでサイバー犯罪が増えていることがわかる。

 サイバー犯罪のうち、大きな割合を占めるのが「ネットワーク利用犯罪」だ。ネットワーク利用犯罪の内訳を下の表にまとめた。

 検挙数で目立つのが「詐欺」で、昨年よりは減ったものの490件もある。ケータイでの架空請求が減ったことで総数は減ったが、パソコン向けサイトでの詐欺は今も多い。以前の記事「消えない請求画面に困惑——ウイルス型アダルト詐欺が急増」でも取り上げたように、パソコン向けサイトでの架空請求やワンクリック詐欺などが増えている。


 増加数で目立っているのは、表の青の部分「出会い系サイト規制法違反」だ。2007年上半期は39件だったが、2008年上半期は159件と4倍以上になっている。また「青少年保護条例違反」も2倍近く増えており、青少年と出会い系サイトを巡る問題が深刻なっていることがわかる。

 出会い系サイト規制法は、18歳未満の児童が出会い系サイトを利用することを禁じたもの。出会い系サイトでは年齢確認が必要な上、児童を誘うような大人の書き込みも禁止されている。成人・児童に関わらず、最大で100万円以下の罰金が科せられている。

 出会い系サイトを巡る犯罪が増加していることから、「改正出会い系サイト規制法」が年内にも施行される予定だ。改正法では、出会い系サイトの運営事業者に対して、都道府県公安委員会への届け出を義務付ける。また問題のある書き込みは、運営側が迅速な削除をすることも義務付けられる。改正法によって、出会い系サイトの被害が減ることを望みたいものだ。

相談件数では詐欺・誹謗中傷が増加、オークションは一段落

 警察のサイバー犯罪窓口などに寄せられた相談件数では、「詐欺・悪徳商法に関する相談」「名誉毀損、誹謗中傷等に関する相談」「迷惑メールに関する相談」が目立って増えている。


「名誉毀損、誹謗中傷等に関する相談」が増えたのは、コミュニティサイトが増えたことが原因の一つと言えそうだ。掲示板だけでなく、SNSやブログなどの利用者が増えたことで、ネットでの名誉毀損と誹謗中傷が問題になっている。いわゆる「学校裏サイト」やケータイサイトの「プロフ」でのトラブルも増えている。

 これに対して「インターネット・オークションに関する相談」は、昨年同期よりも27.5%減っている。オークション詐欺の相談件数は2005年の17,451件がピークで、それ以降は減り続けている。Yahoo!オークションなどの大手オークションサイトが、本人確認を厳重にしたり、詐欺防止のための対策を強化したことが犯罪減少につながっている。

 ただし現在でも半年で5,000件近くのオークションに関する相談があるので、詐欺がなくなったわけではない。「ネットオークションの『委託詐欺』にご注意」でも取り上げているように、他人のIDを乗っ取るなど、巧妙な手段を使うオークション詐欺が今でも行われているので注意したい。

http://www.yomiuri.co.jp/net/security/goshinjyutsu/20080829nt07.htm