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2008年08月28日(木) 08時00分

外国人すべて標的 アフガン 盗賊横行産経新聞

 外国人を狙ったテロや誘拐、襲撃事件が相次ぐアフガニスタン。反外国人感情が高まり、金銭目的で外国人を襲うケースも増えているという。特に今年7月以降は爆弾テロ、誘拐、外国人射殺などが相次ぎ、緊張が高まっていた。

 平成18年からアフガニスタンで取材活動をしている「アジアプレス」所属ジャーナリスト、白川徹さん(23)によると、伊藤さんが拉致されたジャララバード近郊は自動小銃などで武装した盗賊が横行する危険地域。「今回の事件も、盗賊による犯行との印象が強い」とみる。

 白川さんも18年12月、乗り合いタクシーで移動中、自動小銃などでで武装した4人組に襲われた。民族衣装を着て、ひげを伸ばし、耳の聞こえない現地人のふりをして難を逃れたが、「日本人とばれていたら危なかった」。

 白川さんによると、同地域を含むアフガン東部や南東部は米軍の誤爆や誤射などが多く、外国人への反発が強まっている。「盗賊くずれやタリバン志願者も増え、2年間でさらに治安は悪化している」

 こうした反感はNGOなど支援団体も例外ではない。今年3月、首都カブール周辺の難民キャンプを訪れた際は、支援が十分に行き届かない状況を「あいつら(支援団体)がちょろまかしているからだ」と揶揄(やゆ)する声を聞いたという。「学校を建ててもらった村ですら、外国人というだけで忌み嫌っているところがある」と白川さん。

 「2年前には“敵国”の外国人ばかりをターゲットにしていたが、最近は対象が『すべての外国人』に広がっている風潮がある」といい、「今回の事件はとてもショックだ。NGOなどの活動に歯止めがかからなければいいが」と話した。

 宮原信孝久留米大教授=元在アフガニスタン公使参事官=によると、2004年に政府許可を受けた以外の武装集団は非合法とされ、盗賊と化すか麻薬業者に雇われるか、現地の有力者にひそかに雇われて糊口をしのいでいるという。伊藤さんを殺害したのはこれらの集団による可能性もある。

 麻薬業者にとって、ペシャワール周辺は、農民に麻薬栽培をさせる適地。ペシャワール会は農地を開拓するなどして農民を“正業”につける支援を続けており、麻薬業者にとって目障りだった。「伊藤さんはペシャワール会と地元の人々への脅しのために誘拐されたとしか思えない」と宮原教授は話している。

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