記事登録
2008年08月27日(水) 00時00分

放送・通信法制見直し 行政介入に懸念読売新聞

 放送と通信の融合時代に対応する新法「情報通信法(仮称)」の制定を目指す情報通信審議会(総務相の諮問機関)の専門委員会が、9月から具体的な議論を本格化させる。

 放送・通信に関連する九つの法律を一本に集約するとともに規制緩和により新規参入や競争を促す狙いがある。しかし、26日には有識者などで作る「日本再建のため行革を推進する700人委員会」が、反対の立場から放送業界に対する意見聴取を行うなど、規制強化につながるのではとの警戒感も根強い。意見集約には曲折も予想される。(加藤弘之、白櫨正一)

法律の再編成

情報通信法の問題点を議論した「日本再建のため行革を推進する700人委員会」の研究会(26日、東京都港区で)

 総務省が情報通信法の制定を目指す背景には、高速インターネットを通じてパソコンや携帯電話でテレビ番組の視聴が可能になるなど、放送と通信の垣根が低くなり、今の法律が時代にそぐわなくなっているとの判断がある。

 新法は「放送」「通信」の業態を基準に縦割りとなっている規制を、「番組など情報の内容」「課金方法などのシステム」「通信網や放送設備」の三つに再編成することを目指している。

 放送や通信の枠組みを超えた事業参入を容易にするとともに、番組内容の規制を緩和し、新規参入や競争を促すことも狙いだ。総務省は2010年の通常国会に新法を提出し、地上波テレビ放送が完全デジタル化される11年中の施行を目指す方針だ。

論点整理

 今年2月からこの問題の検討を始めた情通審の専門委員会は、6月に今後の議論のたたき台となる「中間論点整理」を公表した。

 論点整理では、行政の関与拡大に警戒感を抱く業界関係者に対する配慮を示した点が注目された。

 例えば法体系の見直しを進める基本的な考え方として、「規制は必要最小限にとどめることが適切だ」と強調した。

 また、新法では、社会的な影響力が大きい「情報の内容」は、規制の対象となる「メディアサービス」に分類されるが、今回の論点整理では、対象となる事業者を民放など現在の放送事業者に限定する方針を打ち出した。

 総務省が規制色を薄めた論点整理を公表した背景には、アクセス数が多いインターネットのサイトなども社会的影響力を基準に「メディアサービス」に分類されて、行政による規制対象になりかねないとの懸念が浮上していた事情がある。

業界に不安

 しかし、依然として放送業界などの不安は払しょくできていない。総務省が中間論点整理について意見を公募したところ合計80件のうち46件は放送事業者からの回答で、大半は新法制定に対して反対か慎重な意見だった。

 代表的な意見の一つは法体系を見直すことで「情報内容の審査などを通じて行政の関与を認めることになる」というものだ。

 「メディアサービス」の考え方についても、「『社会的影響力』というあいまいな概念で規制を行うことには反対」といった声がある。日本新聞協会も7月に公表した見解で「新たなメディア規制につながりかねない」と中間論点整理への懸念を示した。

 専門委員会は9月から放送関係者などへのヒアリングを実施し、こうした懸念に応える構えだが、意見集約できるかどうか予断を許さない状況だ。

関係省庁加え議論を

 「行革700人委員会」の代表世話人である水野清・元総務庁長官=写真=に、総務省が進める「情報通信法」構想について聞いた。(聞き手 黒井崇雄)

 通信と放送の融合問題は、複雑かつ広範な政策課題を抱えている。単に番組内容をどう規制するかというだけでない。情報通信産業の国際競争力の強化や著作権、個人情報の保護などの問題にもかかわる。

 こうした問題を総務省の情報通信審議会だけで議論するのはおかしい。政府のIT戦略本部を中心に、総務省のほか経済産業省、文部科学省、防衛省、警察庁の関係省庁も加えて議論を一からやり直すべきだ。もちろん、首相にも議論を主導する姿勢が求められる。

 そもそも、30兆円以上の市場に成長すると言われる情報通信の分野で、「規制」と「産業振興」の両方を総務省が行うのは、1人でプレーヤーと審判を兼ねるのと同じで、不適切だ。通信・放送の融合問題に合わせて、情報通信産業の規制と産業振興の分離についても議論する必要がある。

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20080827nt01.htm