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2008年08月27日(水) 22時06分

アフガン拉致 現地代表の中村医師「状況認識甘かった」毎日新聞

 【バンコク藤田悟】伊藤さんが所属したペシャワール会の現地代表、中村哲医師(61)は27日夜、滞在先のバンコクから、伊藤さんが被害に遭った現地へと向かった。中村さんは「伊藤君は現地の人たちに好かれ、住民に完全に溶け込んでいた。彼は大丈夫だと思っていたが、私の状況認識が甘かった」と肩を落とした。

 中村さんによると、27日、ジャララバードの北約40キロの渓谷で、捜索していたアフガニスタン人スタッフや村人が男性の遺体を発見。伊藤さんをよく知るスタッフが身元を確認したという。伊藤さんは頭と足に銃弾を受けており、「犯人が彼を連れて逃げる途中、銃で撃って殺害したようだ」と言う。

 伊藤さんは現地に滞在する約10人の日本人スタッフのうち、農作物担当のリーダーで、砂漠化が進む現地で乾燥に強い作物の栽培を試行。サツマイモの普及に見通しをつけたところだったという。

 同会では治安悪化を受けて、20人いた日本人の半分を4月までに帰国させ、伊藤さんら残る10人も年内に帰国する予定だった。事件を受けて、日本人は全員、早ければ月内に帰国するという。会の事業は現地のアフガン人だけで続ける方針で、「骨を埋めてもいいという決意だった彼の遺志を継ぎたい」と話した。

 中村さんは犯人グループについて「村の中であんなことをする人がいるとは考えられない。外部から来た強盗のようなグループではないか」と述べ、「タリバンによる政治目的の犯行なら簡単に殺すとは考えにくい」と否定的な見方を示した。また、「大部分のアフガン人は我々を守ってくれる存在であり、一部の犯罪者の存在によってアフガン人を断罪しないでほしい」と語った。

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