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2008年08月27日(水) 21時39分

<アフガン拉致>男性遺体は伊藤さん NGOスタッフが確認毎日新聞

 アフガニスタン東部のジャララバードで26日、非政府組織(NGO)「ペシャワール会」(福岡市中央区)のスタッフ、伊藤和也さん(31)が拉致された事件で、外務省は27日、地元ナンガルハル州の州知事事務所から、在アフガニスタン日本大使館に「日本人らしき男性の遺体が発見された」との連絡があったことを明らかにした。同会の現地スタッフが遺体と対面し、伊藤さんであることを確認した。外務省も大使館員をジャララバードに派遣。身元確認を急いでいる。

 01年のタリバン政権崩壊後も混乱が続くアフガニスタンで起きた邦人拉致事件は、発生から約27時間で最悪の結末を迎えた。

 27日に会見した山本一太副外相によると、日本時間で同日午後2時ごろ、ナンガルハル州警察から国連アフガン支援ミッション(UNAMA)に「遺体が発見され、ジャララバードに搬送中」との連絡があり、州知事からも大使館に同様の連絡が入った。大使館員は27日午後、ジャララバードの病院に到着した。

 同会の中村哲・現地代表は27日午後、バンコク国際空港で記者団に対し「伊藤君をよく知るアフガン人現地スタッフが遺体と対面し、伊藤君に間違いないと確認した」と語った。代表はこの情報を、国際電話で静岡県掛川市にある伊藤さんの実家にも伝えたという。

 同会の福元満治事務局長(60)によると、遺体は27日午前9時20分(日本時間同日午後1時50分)ごろ、拉致現場のブディアライ村付近の谷間で見つかり、腹部と脚部に銃弾を受けた跡があった。死亡推定時刻は26日午前9〜10時ごろで、拉致グループが逃走中に伊藤さんを射殺したとみられるという。

 中村代表はパキスタンを経由して28日にジャララバード入りし、現地で伊藤さんの葬儀を執り行った後、同日午後に遺体をカブールに移送。検視を経て日本に運ぶ。遺体の日本到着は早くても2、3日後になる見込み。

 伊藤さんの拉致について、反政府武装勢力タリバンの報道官は26日午後から、毎日新聞や複数の地元メディアに犯行を認め「日本人らを隠れ家に移動させる際、アフガン当局と交戦となり、2人は死んだ」と語っていた。

 ただ、ペシャワール会は拉致グループについて「地元部族住民でタリバンとの関連は薄い」としている。

 伊藤さんは26日午前6時(日本時間同10時半)ごろ、アフガン人の運転手とともに、銃で武装した4人の男に拉致された。同会によると、4人は地元の自警団に山に追いつめられ、運転手は逃れて保護されたが、伊藤さんは行方不明になった。

 外務省には26日夜に、アフガン政府から「伊藤さん解放」の連絡が入ったが、約1時間後に誤報と判明した。

 伊藤さんは海外で農業指導をすることを夢見て、静岡県立農林短期大学校(現・県立農林大学校)に進み、03年からアフガニスタンで働き始めた。

 アフガンではここ数年、タリバンが勢力を伸ばし、米軍や国際治安支援部隊(ISAF)を指揮する北大西洋条約機構(NATO)軍と交戦する例が増えていた。NATOの誤爆などで一般市民に死者が出る例もあり、地元の反発も強まっていた。【鵜塚健、村尾哲、カブール栗田慎一】

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