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2008年08月27日(水) 21時25分

現地NGOに広がる動揺 熱意と安全の板挟み アフガン拉致産経新聞

 日本人男性とみられる遺体が発見されたことを受け、アフガニスタンで農業や医療などの支援活動を行ってきた日本のNGOなどは27日、国外退避を含む対応を取り始めた。支援への熱意と安全確保という難題を突き付けられたスタッフらに動揺が広がっている。

 「(伊藤さんが所属したペシャワール会は)現地の言葉を覚え、現地の食事を食べ、地域に根ざしていた。最悪のことが事実なら言葉もない」。NPO法人「難民を助ける会」のメンバーで、平成16年から約2年間カブールに滞在した大西清人さん(42)は悔しさをにじませる。「比較的治安が良かったカブールでも最近は自爆テロが相次いでいた。海外からの支援を良しとしない人も多く、NGOなどはいつでもターゲットになりうる」。同会はこの日、日本人スタッフ2人を出国させた。伊藤さんの拉致事件が決め手になったという。

 長有紀枝理事長(45)は「同じアフガンで献身的な努力をしてきた仲間に起きた事件に、大きな衝撃を受けた。当面は現地スタッフで活動を続けるが、影響は避けられない」。

 農業や医療の専門家ら39人を派遣している国際協力機構(JICA)は、ジャララバードにいるスタッフに外出禁止を指示。これまでも、夜間の外出や日中でも単独行動を禁じていた。広報室の小畑永彦報道課長は「最近は危険度が高まっていた。国外退避を含め、外務省と連絡を取って判断したい」と話す。

 北部のサリプル州で水資源の調査などを行っている「ピースウィンズ・ジャパン」の柴田裕子さん(37)は「危険な地域こそ支援を必要としており、単純に活動を自粛すればよいかといえば、それは難しい」と語った。

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