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2008年08月26日(火) 15時02分

【共犯尋問(1)】総連側に嘘「緒方被告らの指示」と明言産経新聞

 《在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)から中央本部の土地・建物と資金をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元公安調査庁長官、緒方重威(しげたけ)被告(74)と元不動産会社社長、満井忠男被告(74)の第11回公判が26日午後1時17分から、東京地裁103号法廷で始まった。緒方被告はグレーのスーツに弁護士バッジを付けている。満井被告は濃紺のスーツを着て、緒方被告の隣で座っている》

 《今回の証人は、不動産詐欺で緒方、満井両被告とともに詐欺罪に問われた元信託銀行員、河江浩司被告(43)。河江被告は緒方被告ら2人の公判と分離され、6月20日に懲役2年・執行猶予4年の有罪判決が言い渡された。河江被告も2人と同様、起訴事実を否認しており、控訴中》

 《不動産詐欺では、売買代金35億円を用意できたと装い、総連中央本部の土地・建物の所有権を移転しだまし取ったとされる。河江被告は資金調達役を担った事件のキーマンとみられ、その証言が注目される》

 《まずは検察側の質問からだ。検察官は不動産詐欺の概要を述べた上で、尋問を始めた》

 検察官「証人(河江被告)は土地・建物の詐欺について認めましたか」
 河江証人「いいえ」

 検察官「証人は有罪判決を受けましたね」
 河江証人「はい」

 検察官「現在、証人の弁護人が控訴し、裁判中ですね」
 河江証人「はい」

 検察官「平成19年5月31日に総連中央本部の土地・建物の売買契約を締結した際、(航空ベンチャー会社社長の)Aさん(質問の中では実名)は購入代金を投資すると約束していましたか」
 河江証人「いいえ。約束していませんでした」

 検察官「ほかに購入代金を投資するという人はいましたか」
 河江証人「いませんでした」

 検察官「Aさんが投資すると総連側にうそを言って、契約に応じさせていたのですか」
 河江証人「はい」

 《自らの公判では起訴事実を否認していた河江被告だが、総連側をだましていた事実関係についてはあっさりと認めた。それを見た緒方被告は食い入るように河江被告の顔を直視した。不満そうだ。一方、満井被告は苦笑いを浮かべている。その後、核心の証言が…》

 検察官「Aさんが投資することを約束していないのに総連側にうそを言ったことは証人の考えですか」
 河江証人「いいえ。緒方さんと満井さんから、うそを言うよう指示を受けました」

 《重要証人の重要証言。緒方被告は表情をこわばらせた。満井被告はあきれたような表情だ》

 検察官「Aさんが投資を約束していないということは緒方被告、満井被告に報告しましたか」
 河江証人「はい」

 検察官「緒方被告らはそれを分かった上で、うそを言うよう指示をしたのですか」
 河江証人「はい。そうです」

 検察官「総連側にうそをついて売買契約を締結することを打ち合わせたのはいつですか」
 河江証人「当日の(19年)5月31日朝です。ザ・リッツ・カールトン東京(東京・赤坂のホテル)のラウンジで打ち合わせました」

 検察官「その場にはだれがいましたか」
 河江証人「緒方さんと満井さんと私です」

 検察官「売買代金の支払いに先立って所有権移転登記を済ませるということを提案したのはだれですか」
 河江証人「緒方さんです」

 検察官「証人が言ったのでは?」
 河江証人「違います」

 検察官「具体的にはどう言いましたか」
 河江証人「(19年)6月18日に総連とRCC(整理回収機構)との裁判の判決がありました。緒方さんは『私と満井さんはあした(6月1日)から中国に旅行に行きます。戻ってきてから契約を締結したのでは6月18日までに登記が完了しないかもしれない。投資の確約がなくても今月中に契約を締結するしかない』と言いました」

 検察官「緒方被告と満井被告は6月1日から4日まで旅行でしたか」
 河江証人「はい」

 検察官「なぜ旅行から戻ってきてからではいけなかったのですか」
 河江証人「登記が完了するまで(申請してから)2週間程度かかるので、旅行から戻ってからでは6月18日までに完了しない可能性もあり、そうなると総連側が契約に応じてくれなくなると考えていたのだと思います」

 検察官「満井被告は売買代金を後払いすることについて何か言ってましたか」
 河江証人「『総連の物件なので、投資家の意思で登記を先に行って、それを確認した上で売買代金を支払うといえば、納得するのでは』と言っていました」

 検察官「代金後払いにする上で、満井被告は何か重要なことを言っていませんでしたか」
 河江証人「投資家がいるということが大事、と言っていました」

 検察官「どういう意味ですか」
 河江証人「Aさんは投資すると約束していませんでしたが、投資家に仕立てるという意味だと思いました」

 検察官「緒方被告は何か言っていませんでしたか」
 河江証人「同調するように『そうです。Aさんという投資家がいることをぶれないようにしなければいけない』と言いました」

 検察官「どういう意味ですか」
 河江証人「Aさんを投資家と見立てて、きょう契約を締結するんだなと思いました」

 《“共謀”場面について河江被告の生々しい証言が続く》

 検察官「5月31日にそれぞれの役割分担については決めましたか」
 河江証人「私は緒方さんからの指示で、Aさんと会うことと、所有権移転登記のため司法書士を押さえることをしました」

 検察官「なぜ、Aさんと会う必要があったのですか」
 河江証人「それまでの話の流れで、Aさんと再度会って投資を約束した形をとらなければならないと感じました」

 検察官「なぜ必要…」
 緒方被告の弁護人「異議あり。誘導です」

 《質問を繰り返す検察官に対し、弁護側から異議が出た。林正彦裁判長は異議を認め、質問を変えるよう促した。共犯とされる河江被告をめぐる検察側、弁護側の攻防は始まったばかりだ》
    =(2)へ続く

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