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2008年08月26日(火) 19時32分

大雨後の海水浴場は病原菌ウヨウヨ 米国は3割が一時閉鎖、日本は定期検査すらなしMyNewsJapan

 暑い夏には家族連れで海水浴へ行かれる方も多いだろうが、帰ってきてからお腹をこわしたり、皮膚に湿疹ができたりといった経験した方はいないだろうか?気づいていないだけで、実は海水浴が原因での中毒が増えているという報告がある。

 アメリカ政府の疾病対策予防センター(CDCP)の調査では、2003〜2004年で、海水浴場を含む遊泳施設の水による集団中毒での患者総数2696人。そのうち入院者58名と死亡者1名。その数は増加する傾向なのだという。

 アメリカでは、全国主要な3602ヶ所のビーチについて、週1回以上水質検査が行われている。そして国が定める水質基準を超えていた場合には、遊泳禁止措置がとられる。
 2007年には、32%にあたる1167ヶ所のビーチが、一時閉鎖された。閉鎖の日数は、94%が一週間以内だが、中には1ヶ月を超えるところもある。

 海水汚染の一番の原因は、大雨などによる下水のオーバーフローだという。人や動物の糞便が含まれる下水の中には、病原性の細菌やウイルスなどが潜んでいる。それらが海水浴客の口に入ると、下痢や嘔吐、発熱などの胃腸炎を引き起こす。

病原菌の種類によっては赤痢、コレラ、肝炎など深刻な病気につながる可能性もある。特に、免疫の弱い子どもや老人、妊娠中の母親などは発症しやすいため注意を要する。

 日本の海水浴場は安全なのだろうか。温暖化現象のためか、日本でも局地的豪雨が増え、汚染の可能性は高まっている。

 環境省では、毎年全国の海水浴場の水質を、都道府県に検査させ、その結果を発表している。政府の基準値を超えるような海水浴場はない、というのが毎年の結果だ。

 しかし報告書をみると、検査をおこなっているのは、海水浴場がオープンする前の4月から6月にかけてだ。

 アメリカの例も見ても、平常時にはほとんどの海水浴場が基準値を下回っている。問題は台風や局地的豪雨があった時の一時的な汚染の急増なのだが、そういうデータはない。

 首都圏近辺の下水道設備では、特にオーバーフローがおきやすい仕組みになっているため、注意が必要だ。

 下水道には、家庭から出る生活廃水と雨水を一緒に流す合流式下水道と、汚水と雨水を別々の下水管から流す分流式下水道の二種類がある。古い時期の下水道ほど合流式が多く、東京23区の場合8割が合流式。大雨が降ると、雨水が汚水と混ざって下水の量が急増し、処理しきれない分の下水がオーバーフローして、東京湾に流入する。

 今月5日に豊島区を襲った局地的豪雨で、下水道の水かさが急増し、工事中の作業員5名が流され死亡するという事故があった。それらの下水道も合流式だ。

 相模湾に面する神奈川県でも、合流式下水道の地域がまだ残っている。たとえば茅ヶ崎市は約3割が合流式だという。すると上流で豪雨があると、し尿を含んだ下水が流出し、相模湾の海水浴場にも流れ込むことになる。

 茅ヶ崎市の下水道事業では、下水を海へ流す前に一時的にためる貯留管や、オイルボールなどの固形物を取り除くためのスクリーンなどを作り、海水への流出をできるだけ抑える措置をとっているという。

 しかしその効果は果たして確認されているのだろうか?
 水質検査を行っている神奈川県の保健福祉部生活衛生課に聞いてみたところ、「海水浴場の汚染については、常時監視するような仕組みにはなっていない。雨を振った直後など一番ひどい状況でどうかということは調べていないのでわからない」ということだ。

 アメリカでは一般向けアドバイスとして、
1) 大雨の後には海水浴は避ける
2) 排水施設やパイプを探し、その近くでは泳がない。
3) 病原菌を飲み込まないように顔を水につけないようにして泳ぐ
などを勧めている。自己防衛のためには日本でも参考にしておいた方がよいのかもしれない。

(植田武智)


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