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2008年08月26日(火) 21時29分

アフガニスタン 情報錯綜…無事祈る ペシャワール会毎日新聞

 「無事で戻って」−−。アフガニスタン東部で非政府組織(NGO)「ペシャワール会」の伊藤和也さん(31)が武装グループに拉致された26日、国内では家族や関係者が錯綜する情報の確認に追われ、無事を祈り続けた。発生の連絡から8時間余。「解放」の速報は1時間足らずで「未確認」と変わり、混乱に拍車をかけた。

 福岡市中央区大名のペシャワール会事務局には午後0時半過ぎ、外務省邦人テロ対策課から拉致の一報が入り、知らせを受けた会員らがこわばった表情で駆けつけた。

 一時は「銃撃戦」などの情報も乱れ飛び、混乱したが、午後8時40分ごろテレビの速報テロップで「解放」が伝わると、福元満治事務局長は「本当ですか。そうですか、そうですか」と何度もうなずいた。

 しかしすぐに「外務省も現地スタッフもまだ本人と直接連絡は取れていない。解放という言葉通りの意味では受け取れない」。懸念は的中し、1時間足らずで「未確認」と変更された。

 同会は84年の活動開始以来スタッフの安全を守っており、福元事務局長は「起きてはいけないことが起きた。犯人グループには心当たりもない」。断続的に報道陣に対応したが、現地スタッフや外務省経由の情報が錯綜し、事務所内は事実確認に追われた。

 会によると、伊藤さんは静岡の短大で農業を学び、米国の農場で働いた経験も持つ。同会の活動には03年12月から参加した。伊藤さんは面接の際、志望動機について「米国同時多発テロでアフガニスタンの存在を知った。農業の知識を生かし、子どもたちが食べ物に困らないよう少しでも役立ちたい」と熱っぽく語ったという。

 ダラエヌールでは、作物の栽培指導などを担当。アフガニスタンにいる農業指導をする日本人ワーカーの中では一番の古株で、現地語も話せた。住民になじみ、伊藤さんが来ると子どもたちが駆け寄ってくるほどだったという。

 干ばつに見舞われ、食糧も高騰するアフガニスタン。現地は住民同士の確執が深く、いさかいの報復でロケット砲を打ち込むような事件もあったという。会ではトラブル回避のため現地の軍閥とは必要以上の接触を避け、可能な限り安全を追求しながら活動を続けてきた。

 しかし今回の事件を受け、福元事務局長は現地スタッフの一時撤退の可能性に言及した。評価の高いNGO活動は、転機に立っている。【高橋咲子、村尾哲】

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