記事登録
2008年08月25日(月) 11時44分

<異常気象>原因は積乱雲…温暖化影響も…予測難しく毎日新聞

 局地的な「ゲリラ豪雨」、都心では平年の3倍も多い雷、そして突風被害−−。日本列島は今夏、例年以上の異常気象に見舞われた。地球温暖化の影響なのか、今年だけの現象なのか。せめて、事前予測で死亡事故は防ぎたいのだが。【樋岡徹也】

 ゲリラ豪雨をもたらす原因は、発達した積乱雲だ。地表付近の暖かく湿った空気が上昇し、急速に冷やされてできるもので、地上と上空の温度差が激しい夏場に多く発生する。垂直方向に発達するため、局地的に激しい雨をもたらす。雨の時間は短いが、1時間に100ミリ超の猛烈な雨を降らすことがある。

 気象庁によると、30〜50ミリが「バケツをひっくり返したような」雨。神戸市都賀川の事故では、上流付近で1時間36〜38ミリ、東京都豊島区のマンホール事故でも1時間66ミリの集中豪雨があった。

 積乱雲は、雷や突風の原因ともなる。東京都心では7月に7日雷を観測し、7月としては最近50年間で最多で、平年(2.3日)の約3倍だった。福井県敦賀市のイベント会場でテントが突風で飛ばされ10人が死傷するなど、突風被害も相次いだ。村中明・気象庁主任予報官は「例年なら太平洋高気圧が日本全体を覆うが、今年は勢力が弱くて上空に寒気が入り込み、下層の湿った暖気の影響で大気が不安定になった」と分析している。

 異常気象は、地球温暖化や、都市部でのヒートアイランド現象も一因と考えられている。気象庁によると、日本の年平均気温は、最近の100年間で約1度上昇。特に東京では1月の平均気温が過去50年間で2.62度も上がった。1時間の降水量が50ミリ以上の集中豪雨は、76〜87年に全国1000地点当たりで平均年162回だったのに、98〜07年では年238回に増えた。「異常気象分析検討会」会長の木本昌秀・東京大教授は「地球温暖化で水蒸気の量が多くなると、強い雨の頻度が増える」と語る。

 「ゲリラ豪雨」など急激な気象変化を予測できないのか。鈴木和史・気象庁気象防災情報調整官は「積乱雲は数分〜数十分という短時間で発達するうえ、低気圧や前線に伴う降雨と違って場所を特定しにくい」と話す。

 このため、2010年度から警報・注意報を市区町村単位に細分化するほか、豪雨などの危険性を分布図で表した「突風等短時間予測情報(仮称)」を発表する。また、局地豪雨を予想するため「数値予報モデル」を開発し12年度運用を目指す。従来よりきめ細かく予測し、予測時間の間隔を短くすることで、積乱雲の発生をとらえやすくする。独立行政法人「防災科学技術研究所」(本所・茨城県つくば市)も、中央大、防衛大などと連携して、首都圏での風雨監視技術を開発中だ。民間気象会社「ウェザーニューズ」(東京都港区)は、「ゲリラ雷雨メール」のサービスを始めた。約8000人の会員から携帯で雲の状況や写真などを送ってもらい、積乱雲の発生・発達をとらえて事前にメールで知らせる試みで、既に約4万人が利用している。

【関連ニュース】
社説:神戸増水事故 集中豪雨に都市の備えを急げ
集中豪雨:広範囲で積乱雲が急激に発達 関東甲信
インド洋:海水温異常、3年連続で発生…海洋研究開発機構
クローズアップ2008:温暖化よ、やっぱりお前か 局地に異変、気象ゲリラ
読む:『「知」のビジュアル百科…』=ジャック・シャロナー著、平沼洋司・監修

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080825-00000032-mai-soci