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2008年08月25日(月) 12時00分

「合成テレパシー」の開発:思考をコンピューター経由で伝達WIRED VISION

脳のDTI(拡散テンソル画像)。wikimedia commons

米陸軍は[8月13日(米国時間)]、「合成テレパシー」の基礎を研究するための助成金400万ドルを、カリフォルニア大学の研究者チームに交付した。

ただし、心と心を直接通わせる昔ながらのテレパシーの概念とは異なり、精神的なコミュニケーションといっても、コンピューターが仲介するものになるようだ。カリフォルニア大学アーバイン校のリリースは次のように説明している。

このブレイン=コンピューター・インターフェース(BCI)では、脳波記録法(EEG)に似た、非侵襲性の脳の画像分析技術を利用して、人々が考えをお互いに伝えられるようにする。

たとえば、ある兵士が伝えたいメッセージを「考える」と、コンピューター上の会話認識システムが、そのEEG信号を解読する。解読された思考(つまり翻訳された脳波)は、送信システムを使い、特定のターゲットに向けて送られる。

思考をコンピューター・コードに変換したり、逆にコードを思考に変換したりすることには、米軍全体が関心を持っている。

たとえば、[デューク大学の]研究者たちは、米国防総省の国防高等研究計画庁(DARPA)から資金の提供を受けて、ロボットの手足をサルが自分の思考で制御するという研究を行なっている(以下はその動画)。

[デューク大学にいるサルの脳活動によって、京都の国際電気通信基礎技術研究所にある歩行ロボットを遠隔制御する共同研究についての日本語版記事はこちら]

一方、防衛関連の請負業者である米Northrop Grumman社は、「潜在意識」を利用する双眼鏡を作成中だ[「脳によるパターンの検知は、意識的な思考による理解より速い」ことを利用し、双眼鏡が脳波(EEG)を利用して脳をモニターし、攻撃される可能性を兵士に警告するというシステム。日本語版記事はこちら]。

また、米Honeywell社は、前意識による神経反応を監視して、衛星画像上で対象を見分けるのに役立てるシステムを構築した。[コンピューターの画像認識能力と、人間の脳の画像認識能力とを組み合わせ、「生身の人間の10倍もの速さで画像を検索できる」という、コロンビア大学の研究についての日本語版記事はこちら]。

[DARPAでは2000年以来、オペレーターの意識上にある事柄を感知し、それに応じた仕方で情報を提示できるような、コックピットやミサイル制御ステーションなどを開発する『Augmented Cognition』(AugCog:増強された認知)プロジェクトに約7000万ドルを投じてきた。日本語版記事はこちら]

一方で、国防総省の中心的な科学諮問機関である『JASON』は、[戦闘相手がブレイン=コンピューター・インターフェース(BCI)を開発し、]敵兵にBCIが埋め込まれている場合の危険性などについて警告している。

また、米国防情報局(DIA)がつい最近発表した報告では、「敵をわれわれの命令に従わせる」ことができるまで、米軍は神経科学にさらに多くの資金を費やす必要があるとしている[敵の闘う動機を削ぐことや、敵をこちら側の命令に従わせる方法、恐怖や苦痛を感じなくする方法などを認知科学的に研究することを提案している]。

[マイクロ波で脳内に音を発生させ、サブリミナルメッセージ伝達も可能とされる兵器『MEDUSA』についての日本語版記事はこちら]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080825-00000005-wvn-sci