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2008年08月25日(月) 23時31分

自動車メーカー“我慢比べ” トヨタ追随は難しく産経新聞

 トヨタ自動車が値上げする対象車種を商用車とハイブリッド車10車種という限られた車種に絞ったことは、国内自動車市場の苦境を改めて示したといえる。鋼材など原材料価格の高騰で収益が悪化し、自動車メーカーは値上げせざるを得ない状況に追い込まれているが、国内販売の低迷が続く中で値上げすれば、国内市場をさらに落ち込ませる要因になりかねない。トヨタの動きを注視してきた日産自動車やマツダなど競合メーカーは追随値上げに踏み切るかどうか、難しい判断を迫られることになった。(福田雄一)

 トヨタは当初、「クラウン」などの高級車を含め、幅広い車種の値上げを検討していた。自動車用鋼板は毎年のように値上げを続けており、トヨタはここ3年間で「1台当たり6万円のコスト増」(幹部)を自社で吸収してきた。だが、今年5月の鉄鋼大手との価格交渉では約3割の値上げで決着し、“お家芸”である原価低減で吸収できる範囲を超えたからだ。

 だが、最終的にトヨタが出した結論は、大半の車種での値上げ見送り。その背景には厳しい国内市場への配慮があった。平成20年上期(1〜6月)の新車販売台数(軽自動車を除く)は3年連続の200万台割れ。業界では「1%の値上げで販売台数は1%落ちる」といわれており、値上げが市場低迷に拍車をかける恐れをぬぐいきれなかった。こうした懸念はトヨタの社内以上にクルマを売ることを生業にする販売店で大きかった。

 収益と国内市場。両者をてんびんにかけて、最終的にトヨタが下した決断は、ハイブリッド車「プリウス」のように目立った競合車が存在せず「放っておいても売れる」(幹部)車種に絞った限定的な値上げという「軟着陸」だった。

 一方、トヨタの決断によって同業他社はいっそう難しい判断を迫られる。

 なかでも「いずれやらないといけない」(日産首脳)と値上げを示唆してきた日産やマツダは、「プライスリーダー」であるトヨタの値上げ後、追随値上げの機会をうかがっていただけに、経営判断に何らかの影響を受けることは間違いない。

 収益の悪化に耐えきれず、どこが一般車種の本格的な値上げに最初に踏み切るのか。トヨタの決断によって、自動車メーカーの“我慢比べ”はなお続くことになる。

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