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2008年08月25日(月) 11時47分

コードギアスに見る日本人の弱さオーマイニュース

 TBS系で放映中のアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ R2」第19話(2008年8月17日放送)は現実社会にも通じる日本人の弱さが色濃く描かれていた。「コードギアス」は現実とは別の歴史・技術力をもつ世界において、主人公ルルーシュが神聖ブリタニア帝国に反逆する物語である。

 神聖ブリタニア帝国は北米大陸を本土とする広大な帝国で、日本はブリタニアと戦争して敗れ、植民地「エリア11」となった。日本人はイレブンと別称され、差別されている。戦前の日本による朝鮮半島の植民地支配を髣髴(ほうふつ)とさせる状態である。

 ゼロを名乗ったルルーシュはレジスタンス活動家を糾合して黒の騎士団を結成してブリタニアに対抗する。さらに新国家「合衆国日本」を宣言し、反ブリタニアの他国と共に国家連合「超合集国」を打ち立てる。

 ブリタニアによる日本支配が日本の植民地支配のメタファーならば黒の騎士団や合衆国日本は義兵闘争や大韓民国臨時政府に相当するはずである。しかし、興味深い点は、指導者ゼロ(=ルルーシュ)は皇帝から捨てられたブリタニアの皇子であり、母の死の真相解明と妹が安全に暮らせる世界にするという個人的な動機が行動原理になっている。

 そのような人物が主導しなければ、日本を解放するための運動でさえ、まとまらないのが「コードギアス」の世界観である。民族の解放というような高邁(こうまい)な自覚がある訳ではなく、韓国人の民族運動とは比べられない。戦争中は鬼畜とののしった敵国を戦後は同盟国と歓迎するような日本人の脆弱(ぜいじゃく)さが表れている。

 この点は今回放送された第19話「裏切り」において顕著である。ブリタニアの司令官は、ゼロがブリタニアの皇子であり、黒の騎士団を操っているに過ぎないと黒の騎士団幹部に打ち明ける。あっさりとそれを信用した黒の騎士団幹部は日本の解放を条件にゼロをブリタニア側に売り渡そうとする。

 ゼロがいなければ旧レジスタンスはブリタニアに鎮圧され、自分たちも処刑されていたにもかかわらずである。当初はダメなお笑いキャラとして描かれながらも、皇族を守れなかった負い目から皇族への忠義を尽くすブリタニア貴族・ジェレミア辺境伯とは対照的である。

 しかも黒の騎士団総司令の黎星刻や合衆国日本代表の皇神楽耶に相談することなく、勝手に決めている。「敵の敵は味方」という発想なのかもしれないが、日本を植民地支配したブリタニアが日本の解放を履行してくれると期待するのは甘過ぎる。ここには物事を都合よく楽観的に考えがちな日本人の短所が表れている。

 仮にブリタニアが信頼できるとして、ブリタニアと日本を解放する取引をしたならば、ブリタニアと対抗するために超合集国として他国と連合した意味がなくなる。自分たちさえ良ければ他国はどうでも良い、という日本的は発想である。

 これまでルルーシュは主人公ながら、かなり腹黒い存在であったが、敵将の話を信じて簡単に手のひらを返す黒の騎士団を見ると、ルルーシュに強く同情する。黒の騎士団を失ったルルーシュは、それでも第19話の最後で新たな戦いの目的を見いだす。それはルルーシュの個人的な憎悪に回帰するものであった。

 物語としてリアリティを追求すれば、日本という国にはルルーシュが才能を傾けて独立させるほどの価値は存在しないのかもしれない。ルルーシュの戦いには何らかの決着は付けられるだろうが、物語の日本が果たしてどのようになるのかにも注目したい。

(記者:林田 力)

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