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2008年08月25日(月) 19時29分

自衛官いじめ自殺控訴審で逆転判決、国に350万賠償命令読売新聞

 海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)配備の護衛艦「さわぎり」内で自殺した男性3曹(当時21歳)の両親(宮崎市)が、「自殺の原因は上官のいじめ」として、国に2000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、福岡高裁であった。

 牧弘二裁判長は「直属の上官の言動は3曹を誹謗(ひぼう)し、指導の域を超える違法なもの。自殺との因果関係が認められる」として、請求を棄却した1審判決を変更し、国に350万円の支払いを命じた。

 同様の訴訟は横浜地裁などでも係争中だが、原告弁護団によると、上官らの違法行為を認定し、賠償を命じたのは初めて。

 3曹は1997年、海自に入隊した。99年3月からさわぎりに乗艦し、同年11月に、艦内で自殺した。国は「上官らは3曹の技能練度に応じて適切な指導を行った。いじめではなかった」と主張していた。

 これに対し、牧裁判長は「お前は覚えが悪いな」「バカかお前は。3曹失格だ」といった直属の上官の発言について、「技能練度の評価にとどまらず、人格自体を否定した」として違法と判断。3曹は上官の言動によって、うつ病になったと認定し、「上官は、3曹の心身に変調がないか留意、観察して対処する安全配慮義務に違反し、侮辱的な言動を繰り返した」と結論づけた。

 2005年6月の1審・長崎地裁佐世保支部判決は、上官の行為を不適切としたが、「指導・教育として社会的に相当な範囲を逸脱していない」と判断。安全配慮義務についても「上官は3曹のうつ病に気づき、自殺の可能性を予見することは困難だった」と請求を棄却した。

 海上幕僚監部は「判決内容を慎重に検討し、関係機関と調整の上、適切に対処したい」とコメントした。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080825-OYT1T00416.htm?from=main4