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2008年08月22日(金) 09時28分

時代は再びユニクロ!? “欲しい”連発 節約も追い風産経新聞

 ■「1合目」の海外、“ポスト柳井”課題
 ファーストリテイリング(FR)が展開するカジュアルウエアの「ユニクロ」が好調だ。デフレ時代の価格破壊で急成長したユニクロだが、値上げラッシュのインフレ時代を迎え、消費者の節約志向が追い風になっているだけではない。商品の価値と価格のバランスにこだわり、割安で魅力ある新商品を送り出し続けていることが、消費者の高い支持を受けている。インフレ時代に再び脚光を浴びるユニクロの強さと課題を探った。(田村龍彦)

■写真で見る■ 吹石一恵「この夏はブラを着けずに…」

 ユニクロの“独り勝ち”を象徴するのが、この夏に発売した「ブラトップ」のヒットだ。
 タンクトップやキャミソールのバストの部分をブラジャーと一体化させた新しいコンセプトのウエアで、外着にもインナーにも使えるカジュアルでセクシーなスタイルが支持され、300万着を売り上げた。
 ブラトップ効果で既存店売上高は前年同月比11・9%増の2けたの伸びを記録した7月まで3カ月連続のプラスが続く。
 「『こんなものが欲しかった』というユニクロらしい商品ができた」。FR幹部は胸を張る。
 冬物でも東レと共同開発した高い保温力を持つ機能性下着「ヒートテック」が2000万着を売り上げ、ヒットを連発している。
 2008年度第3四半期(07年9月〜08年5月)の売上高は過去最高を記録。営業利益もフリースなどでユニクロ旋風を巻き起こした2001年度に迫る勢いで、08年8月通期決算での過去最高益更新も視野に入ってきた。
 好業績について、FRは「今までと違うことをやったわけではない。商品の完成度を高めてきた成果」(広報担当)と強調する。
 「『不景気=ユニクロ』という構図が定着した。『お父さんはユニクロで』と、百貨店から再び顧客が流れている」(証券アナリスト)
 デフレ時代に支持を受けた低価格志向の消費者だけでなく、節約志向で価格と価値のバランスにシビアになっている消費者をひきつけていることが強さの秘密だ。
 さらに業界では、事実上の創業者の柳井正会長兼社長の存在の大きさを指摘する声も強い。
 柳井氏は05年9月に玉塚元一前社長が業績不振で引責辞任したのを受け、社長兼任で、現場の第一線に復帰した。
 昨年末から商品本部長も兼務。自ら商品の一つ一つをチェックし、チラシにまで目を通すという。同社幹部も「社内が活気づいている。うまくいっているきっかけを探すなら、復帰かもしれない」と認める。
 「消費は非常に悪い。買ってもらえる努力が必要だ」。7月に開いたパーティーで柳井氏は、こう語り、危機感をあらわにした。
 証券アナリストは「新しい商品を作り出して大々的にPRし、国民全員に着せるというのが、柳井氏の手法。(好業績は)柳井氏が戻ってきたことが一番大きい」と指摘する。
 ただ、成長には課題も山積している。柳井氏が掲げ続ける「10年度までに売上高1兆円」の目標は、08年8月期でも5000億円台にとどまり、まだまだ遠い。
 達成には海外のユニクロ事業を3倍の1000億円に拡大することが不可欠だが、「世界はまだ一合目にもいっていない」(柳井氏)のが実情だ。製造拠点と位置づけていた巨大・中国市場の開拓も、今年に入り、北京への再出店をようやく果たし、まだ緒に就いたばかりだ。
 “ポスト柳井”が依然として見えてこないことも問題だ。社長に復帰した当初は「1〜2年で正常な形に戻したい」と語っていたが、後継者を定めた様子はうかがえず、市場では、“柳井依存症”が大きなリスクとして意識されている。
                   ◇
 ■衣料品不振の百貨店 低価格化で客層拡大に躍起
 好調ユニクロとは対照的に百貨店は主力の衣料品不振にあえいでいる。百貨店で購入する“不急不要”の衣料品は、節約消費の直撃を受けているためで、各社は低価格商品の投入や10〜20代の若い女性の開拓に乗り出すなど、巻き返しに懸命だ。
 「どこも同じような商品が並んでいて、顧客のニーズに応えられていない」。大手百貨店幹部は、衣料品不振の理由をこう話す。
 全国百貨店売上高のうち4割近くを占める衣料品販売は7月まで13カ月連続の前年割れ。「一つの商品を買うのに時間をかけるお客さまや単品だけ買うお客さまが増えている」(高島屋日本橋店)など、節約志向の影響は鮮明だ。
 対策として各社が相次いで投入しているのが、従来に比べ2割程度安い低価格商品。品ぞろえを広げることで、新しい顧客層を呼びこむ狙いもある。
 高島屋は6月からアパレルメーカーなどと協力し、婦人、紳士合わせて約140種類のブランドで、従来に比べ2〜3割安い「ナイスプライス」商品を販売している。セール商品ではない定番商品として展開しており、反応は上々という。MD本部の工藤則紀バイヤーは「ナイスプライスを出していなければ、もっと厳しい状況になっていた」と漏らす。
 大丸が展開しているメーカー品より2割程度安いプライベートブランド(PB)「バリュープライス」では、9000〜1万3000円のブラウスなどが人気で、秋冬物でさらに強化する考えだ。
 伊勢丹は新宿本店地下2階を割安の商品を充実させた10〜20代女性をターゲットにした売り場に改装し9月3日にオープンする。西武百貨店池袋本店や小田急百貨店新宿店も秋の改装で20代女性を意識した売り場を設ける。
 若い女性向けの衣料品は「渋谷109」や「新宿ルミネ」などファッションビルの独壇場で、百貨店もこれまでは重視していなかったが、将来の顧客獲得も狙い相次いで強化している。
 ただ、若い女性は移り気でトレンドの変化も激しいだけに、上質感のある品ぞろえや母親と一緒に買い物ができる売り場づくりなどでファッションビルと特徴の違いを出せるかが鍵となりそうだ。

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